【木曜日22-16】「転移」文献

参考文献

【木曜日22-16】「転移」文献

○立教大学院 中原研で、転移に関する英語文献を担当するついでに読んだ文献。

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Zhang,H.(2020) Transfer of Learning between University and the Workplace: A Comparison between Norway and Japan, Perspectives from Social Sciences Students.

■要約:

 ・日本とノルウェーの大学の文系学生の就職後の転移を、質的手法で調査。

 ・大学から職場への転移において、6つの主題(動機、内省、転移レベル、職場環境、心理的性質、否定的感情)があることを明らかにした。

 ・下道での転移(練習により自動化)と、高速での転移(内的動機、自律動機、内省が鍵)が、確かに起こっていたことを提示。

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Salomon,G. & Perkins,D.(1989)Rocky Roads to Transfer: Rethinking Mechanisms of a Neglected Phenomenon. Educational Psychologist, 24(2), 113-142.

・本論文では、転移のWhatではなく、転移のHowを説明したい。
・そのために、Low-road transfer 下道での転移と、High-road transfer 高速での転移、および、Forward-reaching前向きと、Backward-reaching後ろ向きという概念を提示したい。

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・これまでの転移研究では「転移した」「転移しなかった」という矛盾した結果が多い。これらも、下道と高速での転移で説明できるかもしれない。

・転移と学習の違い。そもそも、違う状況で、前に学習したことを、表現できなければ、学習したとは言えない。

・普通車からトラックでの運転。最初は戸惑うが、じきに慣れる。
・勉強時間の管理と、仕事時間の管理は、似ている。
・親から教わった「怒りたくなったら、10秒数えなさい」が、仕事に役立っている。

・Low-road transfer下道での転移は、多くの練習を通じて起こる自動的なもので、内省を必要としない。車の運転のようなものだ。

・High-road transfer高速での転移は、意識的な抽象化が必要になるものだ。
・Mindfulnessとは、非自動的な、統制されたプロセス(Salomon & Globerson,1987)であり、ヴィゴツキーのintellecutualism(1978)の概念と似ている。

・Mindful abstractionは、集中的な抽象化で、メタ認知を必要とする。これが、一つの文脈と他の文脈を橋渡しするものだ。

・下道と高速は、もしかすると同時に通れるかもしれない。行動と練習を内省することを通じて。

・下道にせよ高速にせよ、転移には、その前の学習が行われていることが必要になる(学習していなければ、転移は起こらない)

・数多くの練習が必要になる下道での転移を教室で行うことは難しいかもしれないが、抽象化が必要な高速での転移なら、教室でも設計が可能なのではないか。

・この論文のファーストオーサー(第一著者)をどちらにするかは、コイントスで決めた。

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Perkins,D. & Salomon,G.(1992)Transfer of Learning. International Encyclopedia of Education, 2nd Edition, Oxford, Pergamon Press.

・学習経験から起こってほしい転移は、殆ど起こってない。

・Thordike(1913)は、ラテン語の学習には、何の優位性も無いことを明らかにした。
・彼は、2つの状況での「同一要素」のみが転移に影響すると結論づけた。

・Reflexive 反射的 or low road transfer 下道での転移
・Semi-automatic 半自動的 
・下道での転移は、近転移においてみられる。

・Mindful 意識的 or high road transfer 高速での転移
・「何が汎用的なパターンか?」「どの原則を使えそうか?」「知っていることの何が活かせそうか?」と考える。
・探索の為の時間と、思考の努力を有する。
・積極的な抽象化と、可能性あるつながりを探索を行う。

・2つの道は、共に働くことができる。

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Gardner,B. & Korth,S.(1997) Classroom Strategies That Facilitate Transfer of Learning to the Workplace.

・組織は、チームで効果的に働くための「People skills対人スキル」を持った人々を期待している。
・しかし、大学教育プログラムは、その期待に応えられていない(Foggin,1992)。

・グループとチーム発達に関する教室での学習は、職場に転移するはずである。

・都心の小さなカソリック系の大学で、働く成人向けに、HRDの修士プログラムを2年間にかけて提供。
・参加者は、多様な組織から参加
・グループダイナミクス、グループ発達、グループ効果を高める手法を学んでもらった。

・本プログラムの理論的枠組みは、3つ:
 1)Kolb(1984)のExperiential learning theory経験学習論
 2)学習転移:プログラムの前、プログラム中:アクションプラン、サポートグループ、ロールプレイ、講師による多様な例、プログラムの後:研修仲間、フォローアップ、オンラインとオフライン
 3)Team learning チーム学習

・教員たちは、経験学習が最も適切と考えた。
・グループは、最大7名とした。
・グループでの30分間のプレゼンと、2つのペーパーという課題が課された。
・教室内での活動として、Reflective observation 内省的観察が奨励された。
・グループ内での各自の行動を振り返る機会を作った。

・Carl Rogers(1967)が述べたように、Self-discovered learning自己発見学習こそ、行動の変化をもたらし、それこそ本プログラムで理論が実践に移った理由である。

・職場での課題をリサーチし、それらをプログラム内に関連するよう設定した。

・修士の2年目では、1年目に作った資料や書籍を、Job aids仕事上の手助けとして、職場でも活用するようになった。

・参加者の声「痛みはあったが、獲得できたことも多かった。There was pain but also a lot of gain.」

・卒業生としての関係も維持している。
・彼らは、大学での「Leaderlessリーダーがいない」グループに比べて、職場では、上司がリーダーになることに違和感を感じるという。

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Hager,P. & Hodkinson,P.(2009) Moving beyond the Metaphor of Transfer of Learning.

・本稿では、4つのConceptual lenses概念レンズを確認したい。
 1)The Propositional learning lens
 2)The Skill learning lens
 3)The learning through participation in human practices lens
 4)The learning as transformation or reconstructin lens

・1)The Propositional 命題 learning lens
・Acquisition獲得が、主要なメタファー。Transfer転移というメタファーとも関連する。
・Mind is containerマインドはコンテナ、Knowledge as a type of substance知識は物質の一種と見なしている(Lakoff & Johnson,1980)。

・ 2)The Skill 技術 learning lens
・スキルは、implicit and tacit 暗黙である。

・これら2つのレンズの前提は3つ:
 (1)学ぶ何かは、学習者からは独立している
 (2)学習は、場所から場所への動きと関連している
 (3)学ばれる文脈から、学ばれる内容は、独立している。

・3)The learning through participation参加 in human practices lens
・Lave & Wenger(1991)は、イニシエーションと教育に着目した。
・このレンズの前提は4つ:
 (1)学ぶ何かは、複雑な社会的構成物である
 (2)新人の学習は、目立たない存在から重要な存在への動きと関連する
 (3)学ばれる文脈によって、学ばれる内容は、形作られている
 (4)文脈が変化すれば、学習も変化する。
・このレンズでは、個人の学習については、あまり説明できてない。

・4)The learning as transformation 変容 or reconstructin 再構築 lens
・Costructivism 構成主義
・Scaffoldingスキャフォルディングというメタファーも使われる。新しい学習は、既存の理解の上に作られる。
・Engestrom(2001)のActivity theory活動理論では、システム全体を見る。
・このレンズの前提は3つ:
 (1)学習者は、学習のintegral part 切り離せない部分である
 (2)学習は、Evolving process 発展の過程である
 (3)学習は、emergence of novelty 新規の出現と関連する
・少しの文献しか、このレンズを採用していない。


・Tuomi-Grohn & Engestrom(2003)は、Boundary Crossing越境という概念で、転移を説明している。
・Transfer転移は、プロセスであり、Transition移行とも考えられるのではないか(Beach 2003)

・人は「vessel containing stuff 何か物が詰まった船」として運ばれるのではない。そこには、Relational web関係性のクモの巣がある。

・学習は、関係性のクモの巣を変化させることである。

・同じことを教えたとしても、相手によって理解度は変わる。

・Learning as becoming 学習とは「なる」ことである。
・Learning as a process 学習とはプロセスであり、End points 終わりはない。
・Continue to learn 学び続ける環境を職場に作っていく(Hodkinson & Hodkinson,2004)

・Learning is never complete 学習は、永遠に続く。

・本稿では、学習転移と言うメタファーを批判し、Learning as becoming within a transitional process of boundary crossing 学習を、越境という移行プロセスの中で「なる」ことと捉えることを提案した。

・Learning transfer 学習転移ではなく、Learning transition学習移行ととらえたい。

○面白い! Tuomi-Grohn & Engestrom(2003)を読んでみよう!

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○改めて、転移について考えると、教育学での文献は、

 学校 → 社会 という「遠く、形式陶冶的」な転移を見ようとしているものが多い。

 俺自身は、

 研修 → 職場 という、どちらかと言えば「近く、実質陶冶的」な転移を考えている。

 
 この時点で、同じ「転移」という言葉を使っていても、見てるものが違う気がする。

 研修の転移では、研修の中で学んだこと(頭で理解)を、職場で使ってもらう(体で行動)ことを期待している。
 
 いわば、Knowing(知る) → Doing(やる) が、シンプルに、研修転移で期待されること。

 また色々考えてみよう。

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投稿者:関根雅泰

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