ラーンウェル代表の関根です。
2022年5月9日(月)朝5時15分~5時30分、ライブ配信を行いました。
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・連休はのんびり。本を読んだり、子供たちと遊んだり。
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・「○→○」の対応関係がある実質陶冶のほうが、形式陶冶よりも、転移は起こりやすそうだが、そう簡単にはいかない。
・2つの阻害要因「時間と空間」があるから。
・空間に着目した状況論者 レイブ(1988)と、活動理論の香川(2015)
・転移モデルと越境モデル
(図は、 香川秀太(2015)「越境的な対話と学び」とは何か―プロセス、実践方法、理論. 香川秀太・青山征彦(編)『越境する対話と学び』第2章. 新曜社より)
・転移を実現するには「時間と空間」という阻害要因への対策が必要。
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・トポフィリア@東松山を訪問予定。
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・今日は、ライブ参加 4名でした! ありがとうございます!
次回は、5月16日(月)5時15分から、15分~30分程、テーマは「転移のルーツ(6)」です。お楽しみに!
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●参加してくれた楠田理恵さんのメモ(ありがとうございます!)
2022/05/09MMMT「研修転移のルーツ(5)」メモ
マンデーモーニング、学びタイム!
毎週月曜日、朝5:15~
★記録者:楠田
<楠田個人の振り返り>
今回で、「研修転移のルーツ」本論が終了。毎回難しかったが、関根さんが振り返りをしながら進めてくださっていたので、自分も行きつ戻りつしながら知識を確認していった。そのプロセスは実に面白かった!ルーツを辿ることは、知識を丁寧に整理していくことだった。だから今はなんともスッキリした気持ち。歴代の研究者たちの考え方を、整理しながら学べたMMMT「研修転移のルーツ」(1)~(5)回は、とても有難い機会だった。
前回の「研修転移のルーツ(4)」は、バルドウィン&フォードによるレビュー研究の回だった。その中で関根さんが、「レビューというのは、これまでどんな転移の研究があったのかということをざーっと読んで分かりやすくまとめてくれたもの」と仰っていた。関根さんが今まさに研究されている「研修転移のルーツ」も、今後色々な人たち(研究者、人事担当者)にとっての貴重なレビューになるのかもしれない、と思ったらワクワクしてきた。
関根さんのように、英語で書かれた原書や関連書籍に当たり、ルーツを見つけにいくというのは、とても大変そうに見える。しかし、研修転移という分野ではなく、自分の好きな分野に置き換えて考えたら、もしかしたら自分にもできるかもしれないし、すでに無意識にやってきていたこともあるかもしれない、とふと思った。大変そうだなあ・・と思っても、当のご本人が楽しそうな姿を見ていたら、自分もやってみたいなあと思えてくるから面白い。
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<オープニング>
連休、みなさんいかがお過ごしだったでしょうか?
(関根さん)
ゆっくりできた。
合間を見つけて本が読めた。
子どもたちと映画を見に行った。
「むさしの村」へ行き、久しぶりに渋滞、行列を味わった。
<ボディ>
【前回の復習】
前回、フレイシュマン1953による企業研修における転移研究のルーツを見てきた
フレイシュマンによって明らかになったことは?
リーダーシップ研修を受けた群と受けなかった群があって、研修単体よりも、その人たちが戻った職場の雰囲気の方が影響が大きい
上司が、研修で学んだようなリーダーシップ行動を実際にとっている職場であれば、そこに戻った受講者は、「上司はちゃんとそういう行動をとっていた」と感じる
そう考えると・・
【企業研修は実質陶冶に近い】
①リーダーシップ行動というのは職場でとってほしい行動である
②実際、職場でそういう行動をとっている上司がいる環境もある
③リーダーシップ研修は、このリーダーシップ行動を研修で学んで、それを職場でやってくださいね、というものである
④学んだことをそのまま使える、どちらかというと近い転移であり、実質陶冶的である。
【形式陶冶との比較】
企業研修は、これを学んで、これを使う、というものである
にラテン語とか数学とか、いつ使うんだろうということを学んで、それを学ぶことで地頭がよくなるから、他にも応用が利くんじゃないかという形式陶冶よりも、企業研修は実質陶冶的なので、転移は起こりやすそうである
これまで見てきた図の中で言うと、「〇→〇」なので、より転移しやすいのではないかと
形式陶冶のように「〇→●」よりもよっぽど転移しやすいはず
(「転移の間の関連性」の図参照)
でも、実際はそうではなかった
実質陶冶的なことを学んだとしても、それだけでは転移しないということがフレイシュマンによって明らかになった
【なぜ転移しないのか?】
実質陶冶的な、「これを学んで、これをやってください」という近しいものであっても、やってもらえない(転移しない)のには、2つの阻害要因があると考えられる
「時間」と「空間」
【2のつ阻害要因~時間~】
研修直後であれば、「明日使おう」「今使おう」と思っている
近ければ近いほど覚えているし、意欲も高まっているので転移しやすい
時間が経てば経つほど内容を忘れてしまったり、気持ちが下がったり、他に優先順位が高い仕事が入ってくるのでそれどころじゃなくなったりする
つまり、時の流れ(時間)は、転移を阻害する(邪魔する)要因になるのではないかと
【学校】
学校の子どもたちもそうではないか?
(関根さんには小・中・高に通うお子さんがいらっしゃる)
学んだことをすぐ使う状況があるのであれば、「今やってることは意味があるな」と思えても、「これ何の役に立つんだろう?」というものはなかなか転移しにくい
【2のつ阻害要因~空間~】
そもそも転移という、「空間から空間へ転移する」という考え方そのものをやめた方がいいのではないか?と言った人がいる
ジーン・レイブ(1988)、状況論者、有名なのは「正統的周辺参加論」(エティエンヌ・ウェンガーとの共著)
日本では佐伯胖(さえきゆたか)訳「状況に埋め込まれた学習」
教育学の中では有名な本
この本の中でレイブ氏は、「転移という考え方はいらないのではないか?」と述べている
レイブ氏は状況論者、子どもたちが数学スキルを使っている状況に入り込んだ
子どもたちは学校でやったやり方ではなく、その場所にあるモノ・ツールを使ったり、他の人とのやりとりの中で数学を使った、ということを明らかにした
教室という場所から、それを使う日常生活という空間に転移するのではなく、日常生活の空間の方が大事であるから、空間の方に着目していきましょう、と述べた
同じく状況論の香川先生(2015)は、空間から空間への転移ではなく、「越境」ではないかと考えた
【越境モデル】
転移モデル:〇→〇、研修から職場、教室から日常生活、という空間から空間への転移、移動するということがこれまでの転移モデルの考え方
越境モデル:研修という境目、職場という境目、その境目を越える
今再び、「越境学習」が盛り上がりを見せている
法政大学の石山恒貴教授、伊達洋駆氏の共著「越境学習入門 組織を強くする『冒険人材』の育て方」など
転移ではなくて、境目を越えていく、境目をなるべくなくしていく、境目が折り重なるようにしていくことがこれから必要なのではないか、というのが越境モデルの考え方
研修で学んだことが使われる職場(越境するであろう職場)の状況(どういうツールがあって、どういう人がいるのか)により着目して、越境しやすいような研修を組み立てる必要があるのではないか、と述べられている
越境モデルは、空間と空間は離れたもの、と考えるのではなく、より溶け込んでいくような感じではないだろうか
越境モデルは、これからの研修転移を考える上で非常に参考になる
使われる環境のこと(職場、日常生活)をよく理解して、それに合わせた内容を研修提供者側として設計したり、そもそも研修設計段階において職場のことをよく知っている人から情報を得たりすることが必要になってくる、と越境モデルを通して再認識
【時間と空間という阻害要因への対策】
阻害要因のうち「空間」の重要性については、レイブ氏や香川先生ら状況論者の方々が述べているが、すでにバルドィン&フォード(1988)も述べている
そもそも関根さんがフレイシュマンの研究を見つけたのも、バルドィン&フォードのレビュー研究の中であるし、その中で空間、仕事環境(Work Environment)が大事であるということが述べられている
まさにフレイシュマンは、仕事環境(職場)に言及し、受講者の上司が職場でリーダーシップ行動をとっている環境であれば、それを研修で学んだ人たちも実践する(転移が促進される)ことを明らかにした
【MMMT「研修転移とは(2)」】
「空間」の重要性はフレイシュマンの研究でも言われているし、MMMT「研修転移とは(2)」の中で見てきた「研修転移の促進策」にも関連している
→「時間」に対する対策としては、研修前・研修中・研修後、3つの時間に分けて、どんな働き方ができるのか?ということを見てきた
→「空間」に対する対策としては、職場環境という空間、研修という空間、受講者本人という特性に分けて見てきた
転移、と考えたときに時間と空間が邪魔をする、その邪魔を少しでも下げていく、障害を少しでも取り除いていくために「研修転移の促進策」を活用する
【まとめ】
・今回は、企業研修における転移研究
・フレイシュマン(1953)の研究から、職場の雰囲気が大事であるということが明らかになった
・転移は時間と空間によって阻害されているので、少しでもその障害を取り除いていくことが大切である
・空間の問題については、転移という考え方ではなく、越境と考えたらどうか?という越境モデルがある
・これらを参考に、学んだことをどうやって現場で実践してもらうのか?ということを考えていく必要がある
・これにて「研修転移のルーツ」本論が終了
・次回はこれまでの簡単な振り返りとまとめをして、ルーツに関しては一区切りとする
【越境という言葉から発想すると・・】
小林豊さんのように、日本料理を外国の方に教えて作ってもらうというとき
集まってもらってやるのは楽だけど
その人たちの職場(キッチン)に講師側が出張して教えるというのが越境っぽい感じかもしれない
講師が自分の場所から別の場所に越境して、その職場環境の中で教える
手間暇はかかるが、越境的な考え方で言うとより空間に入り込んで教える、ということ
もしかしたらより転移しやすくなるのかもしれない
同じことは我々も企業研修において、それが使われる場所に出向いていって行う、というのは一つあるのかもしれない
<クロージング>
みなさんは今週、どんな学びが待っているのでしょうか?
(関根さん)
東松山に「トポフィリア」という空間がある
ギリシャ語で「トポ」が「場所」、「フィリア」が「愛する」という意味
「場所を愛する」ということで命名された
比企学、比企に関する歴史、比企一族(「鎌倉殿の13人」で比企能員が出ている)に光を当てる活動をされている高島先生のところへ、風間さんと細田まこっちゃんと行ってくる
地域のすごい方々と会うのは勉強になる
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