○東洋古典に関する本
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『孔子伝』 白川静(1991)
・孔子は、つねに弟子たちと共に行動し、弟子たちの前に自己の全てをさらけだしながら「これ丘なり」というのを、はばからぬ人であった。
・孔子は、巫女の庶生子であった。いわば神の申し子である。父の名も知られず。
・貧賤こそ、偉大な精神を生む土壌であった。
・孔子の入斉は、陽虎の専制(前505)と関係があるように思う。
・孔子には、陽虎のような政治的手腕はなかった。
・孔子の一生は、ある意味では、陽虎との対決であった。
・陽虎は「論語」「孟子」に、陽貨という名で見える人物である。
・孔子は、一生夢を見続けた。夢に出てくるのは、いつも周公であった。
・殷周の革命、西周の創業をなしとげた悲劇の聖者。
・古代の思想は、すべて神と人との関係という問題から生まれている。
・「学んでときに習ふ」という実修こそ、孔子の教学の根本であった。
・儒の源流は、巫史の学に発している。
・孔子は、死をおそれることがなかった。
・仁はきびしいものであった。
・仁をもってゆるされたのは、顔回のみである。
・孔子は、反体制者であり、圏外の人であった。
・哲人は、つねにその生き方を問われる。
・孔子の思想的活動を、当時における奴隷制解放の戦いであったとする説。
・亡命は、孔子を大成させた。
・墨家は、儒家を批判し、儒家との対立を通じて、その教説を整理していった。
・儒墨は、いずれも当時の下層社会から生まれた思想である。
・儒家に対するきびしい批判者とされる荘子は、その精神的系譜からいえば、寧ろ孔子晩年の思想の直系者であり、孟子は正統外の人である。
・「論語」の文は、対話の集約。
・孔子のことばには、イデアがある。
・人は生涯のうち、自らをおそれさせるほどの弟子を持つことができるとすれば、それはこの上ない幸せである。
・「論語」は、ノモスからの脱出を意図する新しい精神への可能性を約束した。
・内面の葛藤を通じて、人は成長する。
・儒家ほど、その国家体制、また政治支配に適合した思想の体系をもつものはない。
・「論語」と「聖書」は、敗北者のための思想。
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『リーダーとして論語のように生きるには』 車文宜・手計仁志(2019)
○中原先生に紹介された。クロスメディパブリッシング小早川さんの所の本。
・古代東洋の教えの期限を紐解くと、紀元前12世紀の周王朝時代に端を発した「周礼」が中心。
・「論語」は、約2500年前、孔子と弟子たちが説いた教えをまとめた言行録。500以上の短編が、全20篇にまとめられている。
・日本には、5世紀ごろに、百済を経由して伝来。
・18世紀ごろ、清代の教育者によって「論語」を源流とする「弟子規(ていしき)」が生まれた。
・「弟子規」は、親が子供に実際にやって見せながら定着させるための教材。「身教」という教育手法。
・リーダーは、誰かが作り出した世界に住むのではなく、自らが住みたい世界をつくる。
・まず磨くべきは徳(ソフトスキル)、次に磨くべきが才(ハードスキル)。この順番が逆になるのは、意味がないどころか、寧ろマイナス。
・聖人賢者の書いた本を3日読まないと、顔が醜くなる。
・人は学びが進むと傲慢になり、他人を見下す。
・学習は、まず「習」から始めよ。
・「徳がある人」とは、宇宙万物の法則に従う心を備えた人。
・学びには、必ず恩師が必要。
・人間がコントロールできるのは「因」のみ。
・古代東洋の教えを、自己流に都合よく解釈してはならない。
・2500年前に正しくて、今日も正しいのであれば、それはきっと2500年後も正しいはず。
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『曹操・曹丕・曹植 詩文選』 川合康三編訳(2022)
曹操
・人間の力を信じ、身体と精神を自分の意志で養うことによって、人の宿命を乗り越えようとする。
・生を肯定する曹操らしさ。
・自分に対する批判を上奏するように求める令。官人に自己評価を求める令。
・「求賢令(きゅうけんれい)」唯だ才を是れ挙げよ、吾得て之を用いん。
曹丕
・今の時間を心行くまで楽しむ。摂生に努めて与えられた生の時間を充実させる。
・曹丕の散文は、気持ちを素直に、生き生きと表現。
・文人は、自分を規範として、他者を見下しがち。
・曹丕の自伝には伴うべき自省が見られない。
曹植
・もとは同じ根から生まれたのに、なんと激しくあぶるのか。
・しいたげられた曹植への同情。
・曹植の友愛の情には、いつもどこかに敵対する勢力を意識しているように見える。
・宴席で人生のはかなさに思いを致すのは、中国の宴のうたの定型である。
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・曹操は、楽府という(歌の)形式を借りながら、内容は詩といってよい作品を作った。
・人の生を肯定する力強い詩である。
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『画伝 蒼天航路』 王欣太 李学仁(2006)
○曹操といえば、『蒼天航路』! 大好きで、文庫版ですが、全巻もってて、時折読み返します。
○作者の王欣太さんの画伝へのコメント抜き書き
・ダメ出しとまともな叱咤をされ続けた。あれを駆け出しのころにやってもらうのは大きい。向上するための素質が育つから。
・そのうち、自分でダメ出しができるようになる。飽きっぽい俺が漫画家を続けてるのには、これ、大きいな。
・描く苦労なんか考えてると、アイデアが描ける範囲でとどまってしまう。そやから「戦車のような馬、描いてください」とか言うてくる担当編集者は、実は貴重な人やねん。
・曹操の後半のテーマは、才に尽きる。
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『素読のすすめ』 安達忠夫(2017)
・素読は、知識の詰め込みとは正反対である。頭で安易にわかることを遮断し、虚心坦懐、ことばの響きと戯れる無心の遊びに近い。
・翻訳のかなめは、外国語の生きたリズムを、日本語の生きたリズムに移し替えること。
・素読にとって大切なのは、古典というものの価値を信じること。
・読み下し文だと、虚字の精神が失われてしまう。原文そのままの本物を。
・日本人が漢文をやらなくなってから、日本文学そのものが瘦せてきた。
・長い年月を経て、人の評価が定まっている本を、古典と呼ぶ。
・そう簡単に口に合おうはずもなく、消化するまでにかなりの根気と時間を要する。
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