○ときがわ自然塾に来て下さった梅崎先生が共著者の本。読み応えあった。
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『人事の統計分析』中嶋・梅崎・井川・柿澤・松繁(編著)(2013)ミネルヴァ書房
・人事制度の中でも、評価制度、等級制度、賃金制度に的を絞る。これらは、従業員の労働の量や質を観察して、賃金や昇進、昇格などの処遇に反映していくための一連の制度であり、企業の人材マネジメントの中核をなす部分である。
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・従業員の労働を評価して処遇決定につなげていくには、まず供給された労働に対する観察が行われなくてはならない。
・労働から産出される具体的な成果だけでなく、期中に発揮されたとみられる能力や望ましい行動なども含めて、多角的な観点から観察さることが実務上一般的である。
・評価項目として提示するということは、これらを通じて企業が望む成果や行動を、従業員に伝えているということでもある。
・上司は評価者としての役割も兼ねているため、従業員の労働は、まずこの上司によって観察されることになる。
・実際には、そもそも労働の観察は難しく、その正確性を疑問の余地なく立証できるような状況はむしろ稀である。
・各人の労働を共有可能な記号へと変換するプロセスを「コード化」と呼ぶ。
・一次評価の結果を持ち寄って比較検討し、各職場の評価分布に「甘辛」の差などの不公平が見られるようであれば、ここで評価コードを調整するという措置が取られる。
・勤務場所が物理的に異なる場合、評価者による直接的な観察はより難しくなる。
・評価者は、部下の労働に対する観察精度の向上に力を尽くし、かつ、それでも完全には誤差のリスクをぬぐい切れない評価結果を伝達して、部下や上位組織の納得を得るという、二重の厄介な作業を担わなくてはならない。こうした負担を「評価者負担」と呼びたい。
・この評価者負担の存在は「中心化傾向」や「寛大化傾向」「ハロー効果」などと呼ばれる評価分布のゆがみの原因となる可能性がある。
○この「評価者負担」まさにあるだろうな~。
・企業の人事制度には、しばしば「流行」が発生する。
・1990年代から2000年代にかけて、企業の人事実務上の一大潮流となっていたのが、成果主義の導入であった。
○2社目もそうだったな~(1999年~2005年)
・2013年現在、往時のような成果主義の流行はもはや鳴りをひそめたと言ってよい。
・6社の日本企業から人事マイクロデータの貸与を受け、分析。
・人事評価の問題点は、
①質の異なる仕事をする者への評価が難しい
②評価基準が不明確または統一が難しい
③評価者訓練が不十分である
④評価の寛大化のために格差がつかない などの項目が多く挙げられる。
・①②は、労働のコード化に伴う問題であり、③④は、評価者負担に関する問題。
・制度は、運用の仕方により本来のねらいからかけ離れ「意図」が達成されないことがある。
・多数の職場管理職(ライン)の反応が「意図せざる結果」を招いた可能性が高い。
・B社の人事評価制度は、2つで構成される。
1)行動評価:社員に求める行動の実践度合いを評価し、その結果は賃金の決定と昇給管理に利用される
2)業績評価:目標の達成度を中心に、仕事の成果を評価し、その結果は賞与の決定に用いられる。
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・評価者が階層化することによって、評価者負担が分担されていると解釈できる。
・管理者は、裁判官の役割も、カウンセラーの役割も、求められる。
・部下の観察が困難な場合には、評価者は客観的指標(売上予算規模指数、営業部下数、内勤部下数)により強く依拠して人事評価を決定していた。
・評価者負担が大きい職場では、より説明しやすい根拠に依拠して人事評価が行われる。
・顧客満足度や部下の育成といった成果が、評価根拠として採用されないかもしれない。
・評価者にとって時間的な負担は、大きな問題ではないと言える。
・良好な関係が、評価者の心理的負担を薄めてくれている。
・部下の人数は、評価行動に全く影響を与えていないことが確認された。
・評価が高い従業員ほど、結果を通知されている。
・優れた上司は、評価者負担に関わらず、職場目標説明、面接、評価結果通知を行う。
・職場目標を説明し部下に納得させることや、部下の能力に応じて公正に仕事配分を行うことが、人事評価制度の納得度を高めることが明らかになった。
・評価の難易度
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・上司部下の評価の一致度が低い職能(事務、設計)は、その職務の特性から、評価難易度が高いと解釈できる。
・パネル分析の応用ににより、中小企業における早期格差が正確に確認された。
・C社での希望退職募集に対する45歳から55歳までの従業員の意思決定を分析した結果、市場でも通じる一般的技能が高い従業員ほど退職を選択する確率が高く、逆に企業特殊技能が蓄積されている従業員ほど残留を選択していた可能性が示された。
・キャリアの初期における「ふるい落とし競争」ともいえる競争の存在が、A社、B社、C社には見られた。
・このような競争は「キャリアマラソン」と呼ぶべきものであろう。
・行動評価結果が、労働意欲への正の効果をもっていることが分かった。
・直近の賞与は「やる気」に正の効果を持っておらず、インセンティブシステムが機能していないことが示唆される。
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・職場の支援や有益なアドバイス、適度な変化のある仕事、成果物に対する自己裁量の付与が、高やる気、低不安につながっていた。
・手続き的公平性施策といったハード面よりも、仕事のソフト面のマネジメントこそ重要であるといえよう。
・認識のずれ
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・従業員が制度を十分に理解しているとはいいがたい。
○驚きの結果。導入されてないのに、されていると思い込んでいる。なんで?
・優秀な従業員ほど、制度を良く理解している。
・従業員の働き方を変化させようとするならば、制度そのものの変更だけでなく、従業員の人事制度に関する理解度と認識の水準をあげることが必要である。
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○この本を読んで、さらに読むべき書籍や文献が見つかった。常に勉強だね!
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