○「キャリア」に関する論文と本。
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金井(2010)日本企業のコア人材のキャリア形成. 日本労働研究雑誌
・育成上手の「伯楽」がどこにいるか。
・70-20-10という数字(Lombardo & Eichinger, 2002)だけが独り歩きするのは良くないが、コア人材の育成には、仕事上の経験、影響を受けた人からの学び(薫陶)研修がある。
・内省や対話、思考をして、経営人材としての自分なりの持論を言語化するには、研修の場が重要になってくる。
・元々我が国では、大阪商人に見られるように、成功している商人がのれん分けできるほどの次世代人材をどれだけ生み出したかが、成功の度合いの証であった。
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若林(1988、2006)組織内キャリア発達とその環境. 経営行動科学
・組織内キャリアの定義「組織内において、ある一定期間のうちに個人が経験する職務内容、役割、地位、身分などの変化の一系列」
・中期キャリア危機 mid-career crisis
・初期段階の幻滅経験が、離職につながる。
・シャイン(1971)によれば、組織内キャリア発達とは、組織内の「移動」にほかならず、それは3次元のモデルから説明できるという。
・図
・機能、地位、中心性の軸に沿った移動
・「入社3年目決定説」を裏付ける有力な資料。
・人材の早期分化と早期フォローアップを同時並行的に実戦。
・選抜とフォローアップのバランスこそが大切である。
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八代(1999)ホワイトカラーのキャリア形成と「異動の力学」 組織科学
・キャリアとは、職業生涯において個人が経験した仕事の軌跡である。
・同一等級に対応する職務に異動する配置転換(ヨコの異動)と、上位の等級に対応する職務に異動する昇進(タテの異動)。
・ライン管理職は、優秀な人材を抱え込もうとする。
・全社的観点から、ヒトと仕事のマッチングを達成しようとするのが、人事部門の行動原則。
・課長クラスの管理職は、上司や人事部門からの部下の異動に関する打診に対して、それを留保あるいは拒否することができるのである。
・希少資源である昇進機会を誰に配分するかという「選抜」が行われることは避けられない。
・上位資格への昇格は、人事考課の結果に基づき、人事部門のイニシアティブによって行われ、役職昇進については、職b直上司の推薦が尊重される。
・企業は昇進で差をつける前に、すでに仕事配置で同一年次従業員に差をつけることによって、「情報の非対称性」という問題を回避しながら、巧妙に選抜を行っている。
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佐藤(2017)企業コミュニティと人材育成・キャリア形成. 日本労働研究雑誌
・企業コミュニティには、人の育成を重視する規範が埋め込まれている。
・企業コミュニティの持つ封鎖性や企業主導性が「負」の側面として語られるようになった。
・図
・知識やスキルの伝達がいわばタテの階層にそって行われる点に企業コミュニティの特徴がある。
・社員の仕事上の能力を高める取り組み
・新卒注力、育成企業責任型が、最も積極的で、中間型がこれに続き、中途注力、育成個人責任型が消極的。
・企業コミュニティ性の高い企業には、人材を育む「苗床」機能があるといえる。
・個人主導型キャリア形成ができにくい。
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佐藤厚(2016)『組織のなかで人を育てる』 有斐閣
・本書で強調するのは、日々の仕事を通じての訓練を継続する(フォーマル、インフォーマルを問わずOJTのPDCAサイクルをしっかり回し続ける)ことの大切さである。
・訓練と学習のあるべき姿は、教え手と学び手が訓練のPDCAサイクルをしっかり回すこと。
・個人レベルの研究:庭師の比喩(土に植えた植物に水分や養分を与え豊に滋養する)
組織レベルの研究:陶芸工の比喩(粘土に形を与える)
・個人の発達過程に注目した研究:一皮むけた経験、経験学習、職場学習
組織の人材開発を重視した研究:問題と変化への対応、不確実性への対応能力
・企業の正社員として雇用されないと、最も重要なOJT機会にアクセスできないことになる。
・(日本では)先輩から後輩へのインフォーマルな訓練や教えあいの慣行の意義が指摘されている(Dore &Sako,1988)
・「よい仕事(=よいOJT機会)を得ようとすれば、それに見合った能力を形成してください」
・日本におけるOJTは、幕末期江戸幕府が、フランス政府の援助により建設した横須賀造船所での技術移転のための教育にその原型があるとされる。(小池・猪木編1987「人材形成の国際比較 東南アジアと日本」)
・「期待する人材像」
○これがどこも一緒に見える。「自立型」「チャレンジ精神」「プロ意識」・・・
・OJTを実施する指導者を、OffJTで用意する。
・指導のばらつきをなくす。
・多くの中小製造業で不足感が強いのは、一人前になって以降の者や、指導者層のレベルである。
・求める仕事能力を明確化することが重要。
・リーダー育成のプロセスは「プールの形成→研修→配置」と要約しうる。
・OJTをベースに関連ある仕事群、つまりキャリアを経験し、OffJTで保管するような技能形成の理論が、伝統的な考え方である。
・(部長は)30代前半頃にはキャリアの「畑」もしくはキャリアアンカーのようなもの(仕事で得意分野)が形成される。その後、30代後半から40歳代にかけて海外子会社出向の経験を積み、「全体を見る目=広い視野」のようなものが獲得される。
・行為の反省的モニター(CA)が重要
・リーダーになるには「良質な仕事経験」や「挑戦的仕事」が大切と言われるが、それは時々の職場で仕事管理のPDCAをしっかり回し、評価されて初めて与えられるものなのだ。
・仕事管理のPDCAサイクルを回す過程の中で、反省的モニターに気づかせる契機として見落とせないのが、OffJTである。
・これからの雇用システムのコアをなす成員は、リーダーとプロフェッショナルである。
・「正社員のワンランク・レベルアップ」
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岡本(1999)アイデンティティ論からみた生涯発達とキャリア形成. 組織科学
・キャリアとは、Super(1980)によれば「人々が生涯において追求し、占めている地位、職務、業務の系列」であって、職業的発達(Vocational development)を拡大した意味で用いられている。
・アイデンティティとは「自分であること」「真の自分」などの意味をもつ。
・30代後半から40代前半の中年期の入り口において、不安定な時期を迎える。
・「自己の有限性の自覚」
・らせん式にアイデンティティは発達、成熟していくであろうと考える。
・「何とか折り合いをつける」ことは、中年期に非常に重要。
○中年期のキャリア本、読んでみよう。
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