○立教大学院 博士課程の新村さんに紹介してもらった本。面白い!
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『アントレプレナーシップ』清水洋(2022)有斐閣
・本を読んで学ぶことは自分への投資
・アントレプレナーシップとは「現在コントロールしている経営資源にとらわれることなく、新しいビジネス機会を追求する程度」
・アントレプレナーを、イノベーションとは切り離して定義する。
・中小企業や零細企業では、そもそもの目標が、ビジネスを拡大するというよりもむしろ、家計を安定的に成立させることにあることも多い。
○ほんとそう。うちもそうだし、比企起業大学メンバーにも、それでいいと伝えている。
・機会費用は、起業したことで、放棄した賃金。
・アントレプレナーシップの程度が低い場合、まずチェックしたいポイントは、流動性制約 Liquidity costraints (Evans and Jovanovic ヨバノビッチ 1989)
・起業の確立が高いのは、スキルの低い人と高い人。
・自己資本が多い(裕福)人は、自分でビジネスを始めやすい。
・新しく設立された企業のほとんどは、小規模のままでとどまり、撤退する可能性はそれほど高くない。
・パパママショップと呼ばれる新規性の低いビジネスで、それほど大きな成長を目指さない企業。細々と経営を続けるビジネスも多い。
・スタートアップの生存率には、地域差がある。
・知識のスピルオーバー効果がみられる地域であれば、スタートアップの生存率が高まる。
○スタートアップではないが、こういう状態を、埼玉県比企郡エリアに作りたい。
・学歴が高い人の起業は、生存率を高める。
・リソースベースドビュー的な戦略が、生存率をあげている。
・既存の経営資源、手段から考えることで、すぐさまことを起こす。エフェクチュエーション。
・組織におけるスラックとは、余っている能力のこと。
・人々の感情は、伝染する。
○だからこそ、リーダーは、上機嫌でいるべし!
・情報の非対称性は、ビジネス機会の源泉。
・Mediator(媒介変数)原因と結果を媒介するもの。
・従業員として雇用されているほうが、経済的なリターンが大きい。起業家は中央値で見ても儲からない。
・非経済的なベネフィットの方が大きいから、起業する。
1)自律的であることへの渇望 2)成功への欲求 3)物事を成し遂げることの喜び
・不確実性に対するストレス耐性に影響を与えると考えられているのが、男性ホルモンの一つテストステロン。
・起業家は、自律的に仕事をすることができており、その結果、概ね精神的幸福感(Mental well being)が高いことが見られている。
・その社会でビジネスに対する価値がどのように置かれているか、これが地味に(でも確実に)アントレプレナーシップに影響する。
・新しい情報は自分を経由して流れる
・保護者に起業家がいると、子供が起業家になる確率が、30~200%上昇する。
・身近にロールモデルがいることが重要。
・産業クラスターにおいて重要なポイントは、知識の波及効果を生み出すコアとなる拠点。
・アントレプレナーシップの教育プログラムと起業家のパフォーマンス(自営業の収入、企業の存続、利益、成長など)にはポジティブな関係がみられている。
・倫理観や道徳観、あるいはビジョン無きアントレプレナーシップは、単なる拝金主義。
○この先生の語り口、軽妙洒脱で面白い!どんどん読み進められた。
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『アントレプレナーの戦略論』新藤晴臣(2015)中央経済社
・アントレプレナーシップを「起業家精神」とするのは誤訳である。
・本書では「起業家活動」の意味で、アントレプレナーシップを表現する。
・アントレプレナーシップ像の違い
・ベンチャービジネス=ハイテクスタートアップと位置付けた方が分かりやすい。
・自主退職による起業が最も成功率が高く、定年退職が最も成功率が低い。
・事業コンセプト Business Concept は「自社は何屋さんか」を定義するもの。
・古代ギリシャ語の「Taktike Techne 用兵の知識」の方が、現在の戦略Strategyにより近い意味として用いられていた。
・リーンスタートアップは、トヨタのリーン生産方式を、アントレプレナーシップに応用した概念。
・事業コンセプトの創造、展開こそ、アントレプレナーの最大の戦略である。
・アントレプレナーが自由に設定できるのは、顧客層(Who)顧客機能(What)代替技術(How)により構成される事業コンセプトのみである。
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『アントレプレナーの経営学1 戦略・起業・イノベーション』E.ボール&J.リピューマ(2016)
・経営とは、学習によって身につけられる規律である。
・Right gameとは、自分がプレーするゲームを形作ることである。
・知識集約型企業は、結びつきを強化するための投資を盛んに行っている。
・誰が意思決定を行うかを明確にし、必要な所に情報が流れるようにすることが、戦略イニシアチブ実行の鍵である。
・ドラッカー(1985)は、競争では3つの主要な起業家の戦略が重要になるとしている。
1)最大勢力で最大速度を出す
2)手薄な所を攻撃する
3)自らの専門性を生かせる「生態的地位」を見つけて、その場を占有すること。
○ニッチ(小さな池)で、シェアNo.1(大きな魚)になる。ランチェスター戦略。
・起業家になる可能性は、制約がない場合には、ほぼ50%高くなる。
D.エバンス&B.ジョヴァノヴィック(1989)流動制約下での起業家の選択の推定モデル
・Born Global Firm ボーングローバル企業は、ハイテク産業に集中しており、下記のような共通の特性をもっている
1)製品を標準化することができる
2)商品が幅広く、相対的に普遍的な魅力をもっている
3)知的財産が十分に保護されている。
・イノベーションにおいては、エフォートとパフォーマンスとの関係はS字に従う。
・C.クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」は、パフォーマンスがS字を示すことを実証した。
・Absorptive Capacity 吸収能力:新たな情報の価値を認識し、それを同化し、事業目的に適用する能力
・レインフォレスト:雑草の発芽を促す
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Some Empirical Aspects of Entrepreneurship
Author(s): David S. Evans and Linda S. Leighton
Source: The American Economic Review, Vol. 79, No. 3, (Jun., 1989), pp. 519-535
https://www.edegan.com/pdfs/ERBC/Lusardi,%205.17.11/Evans_Leighton_1989.pdf
・アメリカ白人男性 約4000人。1966年時点で14歳~24歳。1981年までの間に、12回の調査。
・アメリカ白人男性 約150,000人。1968年~1987年。2年ごとの調査。
・この2つのデータを使い、self-employment 自営業の特徴について分析。
・Johnson(1978)Miller(1984)による「若い労働者の方が、リスクを取る」と主張とは異なり、
自営業に移行する労働者に年齢は関係なかった。
・自営業になった人のうち、半分は7年間のうちに、wage work 賃金労働に戻っている。
・資本を持っている人のほうが、自営業になっていた。これは「流動性制約」(Evans&Jovanovic 1989)の結果と同じであった。
・低い賃金労働者や転職回数が多い人ほど、自営業になっていた。これは「misfits 不適応」からではないか。
・心理学理論のInternal locus of control内的統制を測定するRotter Scaleを見た所、それが高い人の方が自営業者となっていた。
・教育水準の高い人、父親がマネジャーだった人の方が、自営業者となっていた。
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