○「アントレ」本が面白かった清水先生の「イノベーション」本。
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『野生化するイノベーション』清水洋(2019)
・イノベーションは「移動する」「飼いならせない」「破壊する」
・イノベーションとは「経済的な価値を生み出す新しいモノゴト」
・イノベーションの影響は、時間差でじわじわ来る。
・バランスが崩れているところがチャンス。
・何をしたら得(あるいは損)になるのかを教えてくれるものが制度。
・業界の顔ぶれが、何十年も前と変わらないところでは大きなイノベーションは期待できない。
・人の流動性が低い戦後の日本では、イノベーションのジレンマが回避すべき重大な課題となった。
・イノベーションとは目指すものというよりも、課題解決の結果。
・労働の量は、働いた人数と時間。質は、働く人の教育水準。
・銀行が自己資本比率を上げるために、貸し渋りと、(生産性の低い企業への)追い貸しをしたため、資本の貢献が減少した。
・日本企業で働いている人は、その雇用制度に促されて、集団主義的にふるまっている。
・日本企業は、若い時のピークを過ぎると、どんどん本業で稼ぐ力(ROA 総資産利益率=営業利益/総資産)が落ちていく。
・いつまで企業という枠組みでイノベーションを考えるのが適切なのか?
(コダックを飛び出した優秀な人材が数多くのイノベーションを生み出している)
・日本の大企業のコア人材の流動性は、戦後、低かった。
・イノベーションは、既存企業の社内に閉じ込められて、野生性を失ってしまった。
・General Purpose Technology:電気、内燃機関、屋内配管の3つが、社会全体の生産性の向上に極めて重要な役割を担った。
・日本では、企業が人員を解雇せず、配置転換などを通じて再活用してくれるので、失業率が先進国の中でも低い水準で推移してきた。
・人間のタスク:
1)技術によって代替されてしまうもの 2)技術との関係が補完的なもの
・非正規労働や派遣労働が増えたことが、貧困層の増加に大きく関係している。
・非正規労働者が、社内において基幹的な労働を担うようになってきている。
○注釈にあった「自営業が非正規雇用に置き換わっている」という神林(2017)も読んでみよう。
『正規の世界・非正規の世界――現代日本労働経済学の基本問題』
・日本の世代間移動率は、アメリカに比べて高い。
○清水先生の「アントレ」本。おすすめ!
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『イノベーターのためのサイエンスとテクノロジーの経済学』牧兼充(2022)
○清水先生の「アントレ本」でのおすすめ。英語の定量論文を読むのが楽しくなる。
・先端の研究は、必ず論文という形で最初に世に出る。
・ビジネスパーソンが学ぶべきは「科学的思考法」因果関係か相関関係かを判断する。
・定量論文を読む時は、常に回帰分析の式をイメージしながら、何をどんな変数で表しているかを考える。
y(被説明変数)=β(係数)₀+β₁x₁(説明変数)+・・・+誤差項
・説明変数(独立変数)と被説明変数(従属変数)の間に、有意な(偶然ではない)関係がある。
・決定係数は、0から1の間の値で、高ければ高いほど、説明度が高い。
・企業は「若い」から成長するのであって「小さい」から成長するわけではない。
・小企業には、大きく2つのタイプがある。
1)ファミリービジネス 2)ベンチャー企業(スタートアップ)
○地域でのミニ起業は、1)ファミリービジネス内の零細企業・個人事業主に入るかな。
・Peer effectにより、周囲にアントレプレナーが多ければ、それだけ起業は増える。
・地域にアントレプレナーが多ければ、平均的給与は下がる。
・それでも起業するのは、周囲から尊敬されるなど、非金銭的な報酬が得られるから。
・ピアエフェクトにより、悪いアイデアに関しては、起業する前に踏みとどまる。
・アイデアの提供とメンタリングが、スターサイエンティストが、周囲に及ぼす一番の影響だった。
・スターサイエンティストの近くにいて、その知識を企業に移転する。そのための移動時間を減らすために、近くにいる。
・小さな企業に適したサービスが、その地域に多数存在するため、より起業がしやすくなる。
・近距離にいる友人や家族からも資金を集められないような信頼が無い人は、世界からも資金を集められない。
○まさに、論語の「近きもの喜べば、遠きもの来る」。
・論文には最新の情報がコンパクトにつまっている。
○地域でのミニ起業支援にも使えるヒントが見つかった。色々考えてみよう。
‐非金銭的報酬 ‐ピアエフェクト ‐小さな企業に適したサービス
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