○「学習する地域」という言葉から色々探していった文献(論文9本、ビジネス書1冊)
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山本(2002)学習する地域としての長野県諏訪・岡谷地域~機械金属工業技術の学習と革新
・長野県諏訪・岡谷地域は、19世紀末から製糸工業地域として発展し、第二次世界大戦後、精密機械工業の集積地へと転換し、近年では電気機械工業や医療機器工業と密接にかかわる部品製造・金属加工の集積地域として、非大都市圏域の有力な工業地域としての地位を保持している。
・(その理由の一つとして)諏訪・岡谷地域が「学習する地域」として存続してきていることを挙げてもよいのではないか。
・Florida(1995)は、学習とはその行為に関わる諸主体間の相互作用的な営みであることを主張。
・地域経済の担い手たちの間で、学習がなされることは十分にありうることである。
・取引関係にあるわけではない大中小の企業による技術向上のためのネットワークが形成されていたのでは。
・暗黙知と「コード化された知」の融合こそが重要。
・こう主張することは、近年の欧米経済地理学の論文でしばしば語られる、域内企業間の暗黙知に基づく学習のみを重視する考え方に、一つの対抗視点を提供することになる。
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森岡(2005)ミニクラスター形成の考察~ミニクラスター形成のための理論と提言
・伊丹(1998)によれば、「産業集積とは、一つの比較的狭い地域に相互の関連の深い多くの企業が集積している状態をさす。」
・クラスター理論の提唱者は、M.ポーター(1998)。
・ミニクラスターを形成する企業数は、10社程度。
・「京都試作ネット」では、10社がそれぞれの得意分野を生かし、試作品をフルセット受注している。
○これって、比企起業大学メンバーで、違った形でできるかも。
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魏(2016)台湾中小企業連携戦略の形成による産業クラスターの持続と進化
・Florida(1998)は、学習地域(Learning region)がすなわちイノベーションと経済成長を促進する重要な源であるとし、この地域を知識とアイデアに必要な基本的環境とインフラストラクチャーを提供することのできる、知識とアイデアの収集器または保管場所として捉えた。
・産業クラスターが、永続的に発展を続けるには、学習型クラスターに進化する必要があるだろう。
・A-Teamが提供する交流と学習の場により、会員企業はより豊富な情報を取得できるようになった。
・通常の業界団体と異なり、あくまでも企業間アライアンスの延長線上にあり、従来の企業の間の部品取引関係を進化させてより補完的な生産分業体制を構築しようとしている。
・「目に見える学習と競争環境」を構築した。
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R.Florida(1995) Toward the Learning Region.
・Learning region 学習地域が、新しいグローバル、知識を基盤とした資本主義のキー要素となる。
・factory工場は、今後、laboratory実験室のようになっていく。
・大前研一(1993)は、region-states地域国家が、nation-states国民国家をリプレイスする可能性を提示した。
・新しい資本主義は、新しい種類の地域を必要としている。
・地域は、知識創造と継続学習ができる「学習地域」となるべきである。
図 大量生産地域から学習地域へ
○比企地域が「学習地域」として、グローバルにつながるとしたら?
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R.フロリダ(2008)『クリエイティブ資本論―新たな経済階級の台頭』ダイヤモンド社
・クリエイティビティは究極の経営資源
・クリエイティブ時代を支えるのは、開かれた競争
・地域の選択は主にライフスタイルの観点からなされる
・経済発展は、寛容性が高く、多様性に富む(クリエイティブ資本が高い)地域で起きている
・クリエイティブな人は、クリエイティブな人が集まるところに住みたがる(類は友を呼ぶ)
・1人の人間が多様な顔を持つ。作家であり、研究者であり、自転車乗りであり・・・
・「スーパークリエイティブコア」 新しい形式やデザインを生み出す。問題解決/問題発見を行う
・殆どのクリエイティブな労働者は、フリーエージェントではない。フリーエージェントの世界は、大企業なしには考えられないものだろう。
・「上司は部下の仕事について理解していない」(The New World of Work バーレイ 1996)
・ドレスコード:多様性と寛容性のコード
・人は自分の近くにいる人と最も相互作用しあい、23m以上離れている人とはめったに相互作用しない(Allen, 1997)
・クリエイティブクラスは、長時間働く
・クリエイティビティは、仕事と遊びがまじりあったもの
・絶えず刺激や経験を求めずにはいられないというのも、中毒のような状態
・企業が集まるのは、才能ある人々が集中することで生まれる力を利用するため
・人的資本理論によれば、経済成長は高等教育を受けた人々がいる場所で起こる。
クリエイティブ資本理論では、クリエイティブ資本を保有する人々が 好む地域に経済成長が起こる。
社会関係資本理論では、社会的結束と信頼そしてコミュニティーの連帯の産物として経済成長があると考える
・クリエイティブな人々は少ない強い絆と多くの弱い絆を好む
・ジェイコブスの古典「アメリカ大都市の死と生」1969
・地域経済の原動力としての大学:技術、才能、寛容性を相互連関させる
・子供にやさしい都市はクリエイティブ
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R.Hudson(1999)The Learning Economy, the Learning Firm and the Learning Region: A sympathetic critique of the limits to learning.
・「学習」と「知識」こそが、企業と地域の唯一の成功要因であるという見方がある。
・Learning region(Morgan,1995、Camagni,1991)という考え方は、地域におけるtacit knowledge暗黙知と集合学習のプロセスを強調する。
・古いワインを、新しい瓶に入れただけなのでは。
・学習が、経済的成功を約束するわけではない。
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金井(1999)地域におけるソシオダイナミクス・ネットワークの形成と展開. 組織科学
・地域には解決を待っている多様な問題が山積みされている。
・地域をイノベーションプラットフォームとしてとらえ直す。
・様々な組織との「際(ミドル)」に立って、多様な企業や組織を連結しながら事業を創造していく人々が「社際企業家」である(金井1994)。
・能力も分野も異なる複数の企業家が、チームを組むことによって、多様な「場」面で影響力を活用でき、機能の異なる場を連結することができる。
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野中・ラインメラ・柴田(1998)知識と地域~イノベーションのプラットフォームとしての地域
・なぜ特定の地域には産業が集積するのに、他の地域に集中しないのか、そのような現象は、その地域における知識創造とそれを支援する「場」という概念で説明できるのではないか。
・知識創造に向けて、暗黙知を活用するためには、場に存在することが重要。
・場が、地域の発展に大きな影響を与える。
・対話場、サイバー場、実践場、共感場
・産業地域は、学習の場でもある。
・場の核心は、あくまでも主体の場に対するコミットメントであり、単なる入れ物や箱ものではありえない。
・場とポリエージェント(多主体複雑)システム
・シリコンバレー、ルート128、大田区の事例
・ルート128では、企業をこえた場の設定が観察できない
・地域を、イノベーションプラットフォームとしてとらえ直す。
○1990年代、知識創造の理論を、地域に結び付けようという動きがあったよう。今は、どうなんだろう?
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出口(1997)社会科学とポリエージェントシステム. 日本オペレーションズリサーチ学会
・複雑なシステムに関するパラダイムを求める動きは、10年ごとぐらいに、新しい流行が生じる形でずっと続いてきた。
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寺野(1997)学習するエージェントとその組織的問題解決.日本オペレーションズリサーチ学会
・組織科学の研究では、組織の目的は個人では達成不可能な問題を解決するためにあり、組織を運営していくためには、情報処理と情報創造が必要であると主張する。
・組織学習と機械学習との関連を考え始めた。
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