【木曜日23-23】障碍者と起業

立教大学院

【木曜日23-23】障碍者と起業

○立教大学大学院 中原ゼミの英語文献担当として「障碍者と起業」に関するレビュー論文を発表。そこで取り上げられていたいくつかの論文と、ゼミで紹介してもらった論文(論文7本)

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Iacomini,S. Vascelli,L. Berardo,F. Cavallini,F. Dipace,A.(2022)

Self-employment and Entrepreneurship for Young and Adults with Neurodevelopmental or Psychiatric Disorders: a Systematic Review

神経発達症または精神疾患を持つ若者と成人の自営業と起業:システマチック・レビュー

○ゼミでの意見交換(差しさわり無い範囲で抜粋)

・障碍者とみなされるかは、社会的に構築されている。すべての人は障碍者。何らかの欠損がある。ある日突然ラベリングされる。

・身の回りに接するマイノリティとしての障碍者に目がいかない。その人たちのインクルージョンが進まない。
・障害の社会モデル 社会構造そのものが、健常者向けに作られている 
・車いすの人たちが当たり前のレストランを作っている 椅子がない テーブルの高さ それを体感することで、普段使うお店は健常者向けであることに気づいてもらう 日常体験の中で気づく 

https://dare-tomo.team/barrierful-restaurant/

・元NHKディレクターはなぜ認知症のスタッフが働くレストランを作った? 世界150か国に発信された「注文をまちがえる料理店」誕生秘話

https://bunshun.jp/articles/-/53039

・ココワイナリーのワイン美味しいですよ。知的障害者が造るワインに、人々が酔いしれる理由

https://forbesjapan.com/articles/detail/23955

「スパークリングワインを造る過程でビンを少しずつ回す作業や、醸造したワインのビン詰め、ブドウ畑の手入れなど細かい仕事は、障害ある人の集中力が生かされています。」

・日本理化学工業も障碍者雇用では有名ですよね https://www.rikagaku.co.jp/

    KBSが作ったケース:

・私は、起業と聞くと会社に所属していなくても事業が作れる「強い人」がやることというイメージがあったのですが、この関根さんの発表を聞くと別の観点(働き方の向き不向き)から起業を捉えることができるんだなと思いました

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Conroy, Irvine, & Ferris(2009)

Microenterprise Options for People with Intellectural and Developmental Disabilities: An Outcome Evaluation.

・Microenterprise(ミニ起業)の定義:4つのガイドライン  
 1)少額から始める 2)短期間で始める 3)時間は貴重 4)独りで

・ミシガン州のKent郡で取り組み。プログラムではなく、Microenterpriseは、一つのオプションとして。

参考:IncomeLinks
https://yellow.place/en/incomelinks-llc-keene-usa

・Microenterpriseに取組んでいる27名と、その支援者に、アンケート調査を実施。
・「Then and Now」memory method

・知的障害と発達障害を持つミニ起業家にとっての変化:
 1)つまらなさ(過去は高いが、今は低い)2)仕事の幸せ 3)自分がやってることに誇りがある

・ミニ起業することは、より良い状態になっている。

・障碍を持つミニ起業家を支援している人の変化:
 1)自分の仕事が好き 2)お金を稼ごうとしている他者を支援する能力 3)悪いルールや規制に対応できる能力

・仕事生活の質が、両者ともに高まっている。

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Dotson, Richman, Abby, Thompson, & Plotner (2013)

Teaching skills related to self-employment to adults with developmental disabilities: An analog analysis.

・自営業では、ビジネスに関する多くの側面を学ぶ必要がある。

・施設にいる発達障害の生徒8名(19歳~30歳)を対象に実験。
・「リサイクル事業」を学んでもらう。本物のお金ではなく、教室内で使えるトークンを報酬に使用。

・Worker、Supervisor、Office workerというリサイクル事業に必要な3つの職種について学んでもらう。
・4~5つのステップで、10~15項目に分けて、Group-based teaching interactionの手法で教育した。

・8名は全て顕著なパフォーマンスの向上を見せた。

・発達障害を持つ若者に対して、自営業に必要なスキルを教育できることを実証した。
・しかし、Group teaching procedureは、全ての生徒に同じように効果で記であるとは言えない。

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Wiklund, Patzelt, & Dimov (2016)
Entrepreneurship and psychological disorders: How ADHD can be productively harnessed.

・ADHDは、通常の雇用から締め出されている。
・14名のADHD起業家にインタビューを行った(6名が対面、8名が電話)
・2名については、家族に対してもインタビューも行った。

・モデル 図1

・全員が、起業によって、自分のEnergy levelに合わせて仕事ができる点をメリットとして挙げた。

・起業とは、Uncertainity不確実性の中での活動である。
・不確実性の中での活動は、rational choice合理的選択をしづらい。
・ADHDの考えず、待たずに、直感で決めることは、起業に向いている可能性がある。

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Wiklund, Hatak, Patzelt, & Shephed (2018)
Mental disorders in the entrepreneurship context: When being different can be an advantage.

・世界的に見て、1/4の人口が、何らかのMental healthメンタルヘルス問題を抱えている。

・ADHDの特徴は、起業や自営業に向いているという知見もある(Wiklund, Patzelt, & Dimov,2016)

・今後の研究の方向性を提示したい。

・メンタル疾患があると、本人だけでなく、Loved ones愛する人たちにも影響がある(Eakin et al.2004)。
・起業は、パートナーにとっては、将来の収入や事業の継続性など不確実性を伴うストレスフルな経験となる。

・起業とは、他の人では気づけない機会の発見であり、人と違うという特徴は、起業にとって重要である。

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Lerner,D.(2016)
Behavioral disinhibition and nascent venturing: Relevance and
initial effects on potential resource providers.

・Behavioral disinhibition行動の脱抑制・行動障害(ADHD等)は、起業に対して肯定的なつながりがあるというPopular人気ある提言がある(例:Archer,2014、Tice,2010)。
・行動障害に対するRomanticizedロマンチックな見方もある。

・Richard Bronson(of Virgin)Paul Orfalea(of Kinkos) David Neeleman(of Jet Blue)は、ADHDを持つ起業家である。

・起業家の脱抑制行動は、他者から「Generative原動力、生成」として肯定的に受け取られる(仮説1a)
・起業家の脱抑制行動は、他者から「Administrative管理行動」に対して否定的に受け取られる(仮説1b)
・起業家の脱抑制行動は、他者から見た「起業の成功判断」を減少させる(仮説2a)
・起業家の脱抑制行動は、他者から見た「支援や参画意欲」を減少させる(仮説3a)

・本研究でのランダム実験により、行動障害は、資源提供候補者に対しては、ネガティブな結果となった。
・支援を獲得しようとする時は、行動障害の言動を抑えたほうが良いと言える。

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江島・藤野(2019)発達障害とアントレプレナーシップ

○中原研 堀尾さんに教えてもらった論文。(堀尾さん、ありがとうございます!)

・主に成人の発達障害として区分されるのは、
 1)広範性発達障害 PDD:Pervasive Delopmental Disorders
 2)ADHD(注意欠陥多動性障害)である

・近年、PDDは、自閉症スペクトラム(ASD:Autism Spectrum Disorder)という用語に置き換えられている。

・先行研究は、ADHDとアントレプレナーシップの特性との肯定的な関係性を概ね支持している(例:Wiklund, Patzeld, & Dimov,2016)

・本研究では、文献から発達障害を持つ起業家12名と特定。内2名の事例分析を行った。
・4つの発見事実
 1)一般的就労の難しさとフリーランスに向く資質(過集中、自己完結できる職場環境)
 2)診断を受けることが転機に(自身の取り扱い説明書)
 3)こだわりと集中が、起業機会への気づきと学習効果を生む(SNSへの異常なのめりこみ)
 4)潜在的な資質に光を当てる道具 

・機能的衝動性は、起業に正の効果。
 機能不全の衝動性は、起業に負の効果を示すのでは。

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投稿者:関根雅泰

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