○「研修の転移と評価 実践会」開催に向けて読んでいる「研修評価本」。まず1冊目は、ブリンカーホフ先生初の邦訳本。訳者は、評価学の佐々木亮先生。 (1冊)
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『サクセスケース・メソッド』R.ブリンカーホフ(著)佐々木亮(訳)(2022) 多賀出版
●J.ダーキー氏による推薦の言葉
・SCMの良さ
1)分かりやすい 2)実践的 3)行動につながる
・研修によってお宝が発掘できる。
●本文
・SCMでは、どんなに小さくても、どんなに頻繁でなくても、成功を探す。
・SCMが生み出すストーリーは、裁判に耐え得る確かな証拠を引用しており、司法証拠の厳格なルールに裏付けられている。
・他の人のモチベーションを高める具体的な事例として提供。
・語り継がれるべき成功の物語を探すことから始まる。
・SCMの限界
1)偏りがある
2)全体の成功を判断できない
3)平均には関心が無い
4)とってかわるものではなく、代替ツール
・SCMの5ステップ
1)計画づくり
2)インパクトモデルの作成
3)サーベイの実施
4)成功事例の個別インタビュー
5)調査結果の伝達
・インパクトモデルを、評価額では「ロジックモデル」や「Theory of change」と呼ぶ。
投入→活動→アウトプット(結果)→アウトカム(成果)の4段階。
・インパクトモデルで、成功を思い描くことが重要。
・最も成功した人たちが、成功することを可能にしたパフォーマンス環境要因(上司のサポート、インセンティブ、ツールなど)を探し出し、特定する。
・インパクトモデルを完成させるためのヒント(p63参照)
・「組織の目標」は、役職に関係なく、常に同じ文章になる。
・サーベイは、匿名ではなく、記名式。回答者を特定する必要がある。
・コンサルタントだけが、個人名を保持し、サーベイ実施後は、個人名や識別情報を消去する。
・どのくらいの期間が経過すれば、参加者が研修で学んだことを実践する十分な機会を得られると、合理的に考えられるか? それが、SCMサーベイを実施する時期(1か月後、3か月後、6か月後)を決める参考となる。
・経験則では、9~12か月よりも前に遡っての調査はしない。
・さっくりとしたサンプルサイズの目安は、40名以上。
・インタビュー中に、成功の「偽陽性」が判明する場合もある。
・一回のインタビューに、一番いいのは、45分の予定を立てること。
・録音は必要ない。メモを取る実践のほうが、録音に頼るよりも優れている。
・個別インタビューは、「バケツを満たすプロセス」
・成功事例インタビューバケツ
1)何を使って成功したのか?
2)どんな成果が出たのか?
3)その成果は、どんな価値があるか?
4)何が役に立ったのか?
5)成功を再生産するための提案は?(オプション)
・不成功事例のインタビューバケツ
1)障壁は何だったのか?
2)提案は何かあるか?
・なぜ、それが重要なのか? 効果(インパクト)を訊く。
・どうやって、それをしたのか? 行動やふるまいを訊く。
・SCMは、効果(インパクト)を評価したい場合は、何かの取組がどれだけうまくいっているかという疑問がある場合に、使える。
・SCM調査が最も価値をもつのは、より大きな組織改革、改善戦略の一環として用いられる場合だろう。
・SCM調査が最も得意とするのは、即席プロトタイピング(緊急デザイン)
・SCM調査の利点は、人々がソフトスキルをいつ、どのように使ったかを具体的に詳細に示すことができること。
・SCM調査の基本的な考え方は、「いくつかの、あるいは一つの成功例を見ることで、価値あることを学ぶことができる」ということ。
●翻訳者(佐々木亮先生)から:日本の社会での適用に向けて
・SCMは、日本の社会と大変相性が良い。
・伸びる人には伸びてもらって、その成功例から学ぶ。
・SCMでは、ベストな事例を特定して、深遠なインタビューを実施して、味のある力の入ったストーリーを書く。
・SCMは、両者(EBPと定性的手法)の中間的手法であり、適度な厳密さと正確さを持ちながら、比較的安価で迅速に、何が上手くいっていて、何が上手くいっていないのかを、経営幹部から現場の監督まで、誰もが信じられ、説得力があり、実用に役立つと思える方法で、信頼できる証拠を作成することができる。
・厳密に確かに効果があったというエビデンスが必要な場合には、やはりEBP(客観的根拠に基づく実践)のデザインに基づくインパクト評価が必須。
参考:インパクト評価事例集(佐々木亮 2011~2021)
https://www.idcj.jp/9evaluation/sub5_files/impact_eval_jirei_28july2011.pdf
参考:日本評価学会
http://evaluationjp.org/index.html
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参考:ブリンカーホフ先生の本
参考:佐々木亮先生の本
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