○これらハーヴェイ教授の本を読んで、「マルクスを読んでみよう!」という勇気をもらえた。(2冊)
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『反資本主義 ~新自由主義の危機から真の自由へ~』D.ハーヴェイ(2023)
・ハーヴェイは、資本主義に対する社会主義的代替案がいかにして可能になるかを示している。
・新自由主義は、もやは大衆の同意を確保できない。
・マルクス主義というレンズを通して、資本主義を考察する。
・新自由主義が決定的問題だということに、私は賛同しかねる。
・問題は資本主義なのであり、その特殊な新自由主義モデルではない。
・深刻な問題の一つは「社会的不平等の水準」「環境劣化問題」である。
・今の姿のままでは、資本は存続できない。
・マルクスの時代に、資本主義が突如崩壊したとしても、世界の人々の大半は、依然として自力で生活し再生産できたであろう。
・今では、資本流通を介した食品配送に依存するようになっている。
・新自由主義とは、一貫して一つの階級プロジェクトと定義される。
・クリントン政権下の民主党は、新自由主義政治の代行機関となった。
・社会的不平等の増大は、ピケティの著書『21世紀の資本』に記されている。
○よし!この本にも挑戦しよう。
・マルクスの『資本論』で、利益率の最大化は、賃金の削減にかかっていると述べられている。
・資本家が労働者への支払を渋れば渋るほど、市場は縮小する。
・地理的拡張を駆使する。
・人々にクレジットカードを所持させ、借金をさせる。
・新自由主義的プロジェクトが、強力な保守主義国家とかみ合った。
○日本の小泉総理の後の安倍総理もその流れなのかな。
・偏執的で不安定で反社会性パーソナリティを少々抱えたD.トランプが行ったことは、純粋な新自由主義的政策である。
・あらゆるものの絶えざる金融化。
・金融はしばしば寄生的機能とみなされてきた。
・資本は常に複利的成長を目指す。
・我々が入り込みつつあるのは、債務奴隷状況、あるいは、負債懲役状況である。
・新自由主義は、主に上層階級の富と権力を維持し最大限強化するプロジェクトである。
・巨大な慈善事業を立ち上げることで、富裕層は自分の富を正当化する。
○まさに、強欲資本主義、意識高い系資本主義だよな~。
●参考:
・ポランニーは、自由には良いあり方(例:言論の自由)と悪いあり方(例:惨事便乗型資本主義)があると語っている。
・国家統制からは自由になるが、市場の奴隷となる。
・住宅が社会的に供給された1960年代から、住宅供給のない世界へと移行した。
・自由の国が実現するためには、必然性の国が現実的に乗り越えられなければならない。
○國分先生の本で知ったマルクスの印象的な言葉。
●参考:
『暇と退屈の倫理学』國分功一朗(2015)
https://www.learn-well.com/blog/2024/03/philoshophy.html
・中国はいまだにマルクス主義の立場にあると表明している。
・中国のセメント消費量
・『資本論』は、商品論から始まる。
・権力には2つの論理がある。一つは、領土的論理。もう一つは、資本主義的論理である。
・アメリカは、植民地の解放から利益を得る。
・植民地は、帝国列強の専属市場としてとどまるべきではない。
・量ではなく率を強調することは、結局、上層階級のための言い訳になる。
・良好な社会とは、必然性の国が満たされた社会である。つまり適切な生活を送れるだけの食料、衣料、住宅、雇用、そして必要なものを利用できる権利を万人が手にしている社会だ。ひいては、あとはすべて自由時間である。
・今の姿に資本が至ったのは、残虐行為や暴力による。
・現代資本主義は、生産における生きた労働の搾取による蓄積ではなく、略奪による蓄積にますます大きく依存しつつある。
・アメリカの空港が閉鎖されれば、基本的に資本の流れが止まる。空港労働者は、巨大な潜在的政治力を秘めている。
・このグラフが、自分の見方の多くを考え直させることとなった。
・2020年 平均濃度 400ppm以上
・2007年~08年の恐慌から、中国がグローバル資本主義を救ったが、温室効果ガス排出量も大きく増えた。
・中国の目標は、2025年までに資本集約型の経済に移行することである。
・労働者の提供した労働力は、その生産物、労働過程からも疎外される。
・資本家も、その生産物から疎外されている。
・社会主義社会の大きな特徴の一つは、豊かな自由時間が万人にあること。
・長持ちする製品を、資本は望まない。
・代償的消費様式とは、できる限り毎日新たな流行を創り出し、長持ちしないじつにさまざまな製品をこしらえること。
○スマホなんて、まさにそうだよな~。
・過剰な観光産業に苦しむバルセロナは、地域の特色が壊れ始め、観光客の満足感も薄れ、地元住民にとっても耐え難いものになりつつある。
・われわれの社会の向かう先がどこかおかしいという感じ。
○これ多くの人が思っている感覚かも。
・資本は労働者を、使い捨ての労働力とみなすようになった。
・価値喪失が起こるのは、単に商品が売れないからというわけではなく、一定期間内に商品が売れないからなのである。
・我々が病めば病むほど、大手製薬会社は儲かる。
・新自由主義化の度合いの小さな国のほうが、パンデミックを切り抜けた。
・在宅仕事ができるのは誰か、そしてできないのは誰か。
・自宅隔離したり、待機したりする余裕があるのは誰か。
・集団的活動が追及する究極目標は、個人の自由な発展である。
・マルクスが、集団的活動を動員しようとしたのは、個人の自由を獲得する為なのである。
・ある社会の「富」を測る基準は、基本的必要が満たされているがゆえに、何の強制もなく、本当にしたいと思うことを誰もが実行できるような自由に処分できる「時間」がどれくらいあるのかとなるであろう。
・今日という時代は危機にあるが、新たな可能性を見出す好機でもある。
・「革命とは、長期の過程であって、1つの出来事ではない」
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『新自由主義 ~その歴史的展開と現在~』D.ハーヴェイ(2007)
・1978年~80年を、世界の社会経済史における革命的な転換点とみなすかもしれない。
・新自由主義とは、個々人の企業活動の自由とその能力とが、無制約に発揮されることによって、人類の富と福利が最も増大すると主張する政治経済的実践の理論である。
・新自由主義化がどこから生じたのか、それがどのようにしてかくも徹底的に世界中に広がり装飾したのか。
・ミルトン・フリードマンの新自由主義理論に傾倒していた「シカゴボーイズ」の名で知られているエコノミストグループが、チリの経済再建を手助けするために召集された。
・新自由主義は、資本蓄積のための条件を再構築し、経済エリートの権力を回復するための政治的プロジェクトとして解釈することもできる。
・フリードマンらが、オーストリアの政治哲学者 フリードリヒ・フォン・ハイエクの周囲に集まり、モンペルラン協会が、1947年に創設された。
・ハイエクが、1976年にノーベル経済学賞を受賞したことで、新自由主義理論はアカデミズムの世界でも権威を勝ち取っていった。
・レーガンによる規制緩和は、大企業が利益をあげるための無制限の市場的自由の新しい領域を切り開いた。
・サッチャーは、R.ブランソンやハンソン卿、ジョージ・ソロスといった新しい企業家階級を支援し、彼らからも支持された。
・新自由主義化が意味したのは、あらゆるものの金融化だった。生産から金融への権力移動が生じた。
・バイオテクノロジーや情報技術などの新しい経済部門に、新興の大金持ちが生まれた(ビル・ゲイツ等)
・(ダボス会議に集まるような)彼らは、グローバルな諸問題に巨大な影響力を行使し、普通の市民にはけっして持ちえない行動の自由を持っているのである。
・新自由主義は、なぜかくも権威主義的で、強圧的で、反民主主義的になったのか。
・金持ちのゲットー(Gated community:排他的地域コミュニティー)で快適な生活を送るエリートたちにとっては、実際に世界はより良い場所に違いない。
○1990年~1996年にアメリカ南部に留学していた時も、こういうゲットーは確かにあった。
・新自由主義は、ポストモダニズムと呼ばれる文化的推進力と少なからぬ親和性がある。
・1970年代に、ビジネス界は、一つの階級として行動する能力を磨いた。
・イギリスの一般大衆から見て、何でもかんでも新自由主義化すればいいというものではなかった。
・サッチャーは、持ち家、私的所有、個人主義に喜びを見出す中産階級を育成し、企業活動の機会を解き放つことで、同意をつくりあげようとした。
・各人の成功や失敗は、社会システム上の問題(例:資本主義に内在する階級的排除)のせいであるよりも、むしろ企業家的美徳の欠如とか個人的失敗(例:教育による人的資本への十分な投資を怠った)という観点から解釈される。
○「メリトクラシー 能力主義」もこれを加速しているのかも。
●参考:
・新自由主義者の理論家たちは、民主主義に対して、根深い不信を抱いている。
・彼らは、専門家やエリートによる統治を支持する傾向にある。
・少数者の自由のために、大衆の自由は制限されるだろう。
・社会民主主義国家は、医療や教育、さらには住宅供給などの重要経済部門を、市場の手にゆだねてこなかった。
・それは、人がその基本的なニーズを満たす過程に、市場の力が介在すべきではないし、その権利が支払い能力によって制限されてはならないという理由からだった。
・ナショナリズムの勃興は、新自由主義のの衝撃によって、社会的連帯の旧来の絆が破壊されていることに対する反発をみなすことができる。
・1980年代にグローバル経済における競争力の推進力となったのは、日本であり、東アジアのタイガーエコノミーであり、西ドイツであった。
・社会的不平等の拡大は、西ドイツと日本の場合には、食い止められていた。
・1990年代半ばの「ワシントン・コンセンサス」によって、アメリカとイギリスの新自由主義モデルが、グローバルな諸問題に対する解決策だとされた。
○このあたりから、日本の労働者派遣の規制緩和、非正規労働者の増加、就職氷河期につながってるんだろうな~。
・日本との旧植民地関係は、韓国に多様な利益をもたらした。例えば、日本の経済的、軍事的組織戦略に通じることができたこと(パクチョンヒは日本の陸軍士官学校で訓練を受けていた)や、外国市場に進出するにあたって、日本の積極的支援を受けられたことなどである。
・上層部への富や権力の集中こそが、新自由主義化の本質。
・中国は、世界で最も急速に成長している経済の一つかもしれないが、同時に最も不平等な社会の一つとなった。
・共産党は、社会の上層に巨大な富が集中するのを受け入れた。
・新自由主義化が、全世界の成長を促進することに概して失敗している。
・新自由主義化のもとでは「使い捨て労働者」が、世界的規模で労働者の典型として現れる。
・非人間的で健康を破壊する危険な仕事の重荷を背負わされているのは、大部分が女性であり、時には子供である。
・新自由主義化の時代は、近年の地球で最も速く生物種が大量に絶滅した時代でもある。
・新自由主義的な権利体制を受け入れることは、終わりなき資本蓄積と経済成長という体制のもとで生きる他に道はないと認めることである。
・しかし全く異なった権利概念も存在する。例えば、地球の公共財を平等に享受する権利や基本的な食糧保証を享受する権利である。
・マルクスは空腹は自由を生み出さないという恐ろしくラディカルな見解を抱いていた。
・「自由の王国は、実際、窮乏と外的合目的性とによって規定された労働がなくなるところではじめてはじまる」と述べている。
・使い捨て労働者にとって、新自由主義から得ることができるのは、貧困、飢餓、疾病、絶望だけである。
・自前の「地域通貨」をもつ地域経済取引システム(LETS)をつくりあげることで、相互扶助の世界を目指そうとする人々がいる。
●参考:LETS
https://ja.wikipedia.org/wiki/LETS
・新自由主義化に対するオルタナティブを望む声はいたるところにあふれている。
―――
●日本の新自由主義 渡辺治
・1982年 中曽根政権による行政改革と民営化が、新自由主義改革の日本版である。
・新自由主義の本格的な遂行は、小泉政権にいたってはじめて可能であったのである。
・日本の新自由主義化は、労働運動への攻撃と階級権力の再確立という契機を含まなかったのである。
・開発主義的官僚による規制、自民党利益政治による高負担と弱小産業保護こそ、グローバル経済下の競争力阻害の2代柱となったのである。
・90年代に入って、既存体制の根本的な再編成が求められることとなり、これが日本の新自由主義改革のはじまりであった。
・小泉内閣が行った2005年9月の「郵政民営化」選挙は、小選挙区制の自民党改造効果が劇的に現れた選挙で会った。
●参考:2005年9月の衆院選挙
・小泉政権下で新自由主義は一気に進行し、大企業の競争力強化による景気回復が実現した。
・しかし、既存社会の安定は崩れ、社会統合の破綻が顕わになった。「格差社会」「ワーキングプア」という言葉が流行し、犯罪の増加、家庭の崩壊などが社会問題化した。
・こうした社会統合の破綻に対処すべく、小泉政権下で、新保守主義が台頭した。
・ついに、安倍晋三という新保守はの首相を出すまでに至った。
・保守政治家の主流は、地元の声にも耳を傾け、地元への公共事業投資と利益散布に気を配る、その意味で、成長と平等をモットーにした政治家であった。
・(日本には)オルタナティブとしての福祉国家経験がない。
・新自由主義へのオルタナティブは、公共事業投資の利益誘導型政治しか示されていない。
●訳者あとがき
・帝国主義が、横への権力拡張だとすれば、新自由主義は、縦への権力拡張である。
・ハーヴェイは、1971年、『資本論』の読書会を行うようになる。
・「~わかったのは、自分がマルクスを理解していないということだった」
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