○D.ハーヴェイの「資本論入門」(1冊)
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『資本論入門』D.ハーヴェイ(著)森田成也・中村好孝(訳)(2011)
・若い世代がまるごと、マルクス経済学と親しみ機会を奪われたまま成長した。
・本書を「資本論」を読む旅の友(コンパニオン)だと思って。
○いいね~。ハーヴェイ教授のお陰で、資本論に取組み覚悟ができた。
●序章
・真の学習とは、常に、未知のものを理解しようと格闘することを必然的に伴っている。
・マルクスが語っていることを理解しようと虚心坦懐につとめなければならない。
・「資本論」におけるマルクスの目的は、資本主義がどのように運動しているかを、経済学批判を通じて解明することである。
・子供は非常に弁証法的で、彼らはいっさいを、運動、矛盾、変転の中で見る。
●第1章
・価値とは、社会的必要労働時間
・商品は、人間の欲求、必要、欲望を満たさなければ、価値を持たないというのだ。
・議論の展開パターン
・統一物は、矛盾を内包しており、それはそれでさらに別の二重性を生み出す。
・物神性(フェティシズム)
・完全市場と見えざる手という自由主義の空想的見解を受け入れた上で、それらがすべての者に有益な結果をもたらすどころではなく、資本家階級を途方もなく豊かにするが、労働者とその他全員を相対的に貧しくするということを示すのである。
●第2章
・国家の最も重要な機能の一つは、貨幣制度を組織化し、貨幣名を規定し、貨幣制度を効果的かつ安定的に維持することに関わっている。
・諸矛盾は、けっして最終的に解決されない。
・マルクスの弁証法は、閉じられたものではない。
・W(商品)-G(貨幣)-W(商品)
・資本主義的生産様式は、本質的に無限の蓄積と無制限な成長に基づいている。
・G(貨幣)-W(商品)-G(貨幣)は、商品ではなく、貨幣が目的である流通形態である。
・より多くの貨幣を得るために、貨幣が流通へと入る時、資本が発生するのである。
・資本論の第三章までで音を上げてしまう人が多い。
●第3章
・G-W-G+ΔG この追加分たるΔGが、剰余価値。
・資本は「物」ではなく、価値流通の過程である。
・伝統的経済学は、資本であるところの生産要素を測る(価値評価する)のに、さんざん苦労している。
○これは、今の「人的資本」でも一緒。資本を過程と考えると、また変わってくるのかも。
・資本とは、ある特定の仕方で使用される貨幣である。
・資本は過程である、まさにここに核心がある。
・資本家は、労働者そのものを、所持することはできない。
・労働者は、自分自身のために働くことができない。
・労働者は、常に、W-G-W 循環の中にいるが、資本家は、G-W-G’の中で活動しているのである。
○ここだよな~。
・「必要」の独自性こそが、労働力を他の全ての商品から区別している。
●第4章
・マルクスの議論の認識地図
・ついに、資本と労働とうの階級概念という根本概念へといたる。
・これは、議論の因果連鎖ではなく、段階的な展開なのである。
・マルクスは、19世紀初期のロマン主義の影響を受けている。
・教育者として「過程‐物」関係と直面する。
・生徒たちの学習過程は、最終的には何らかの遂行物によって判断される。その物が生産される過程を評価することは、不可能とまでは言わなくともしばしば困難である。
○ここ、まさにそうだよな~。
・利潤の源泉は、剰余価値にある。
・資本家であるためには、剰余価値を生産しなければならない。
・資本は、G-W-G+ΔGの循環のうちにある。
・マルクスは、不変資本(C)と、可変資本(V)と呼ぶものとを区別する。
・労働過程における能動的要素は、可変資本である。
・時間に対する支配こそ、資本主義的生産様式における闘争の中心的ベクトルだということである。
○自分の人生の時間をコントロール(支配)したいというのは、組織を出て独立起業する人の大きな欲求。
●第5章
・24時間働くというのは不可能である。なぜなら、労働力の肉体的限界が存在するからである。
・時間こそ、資本主義における本質的なもの。
・労働者階級の衰退を許容することは、軍事的に危険。
・過度労働による死は、19世紀に限定されるものではない。日本では「過労死」という専門用語が存在するほどである。
・過剰人口により、資本家は、労働者の健康と福祉を考慮することなく、超過搾取することができる。
・産業労働者自身のための巨大な「労働の家(ワークハウス)」の形をとって実現された。それは「工場」と呼ばれた。
・工場という空間組織は、フーコーを触発するものであった。
○工場=監獄 っていうイメージになるよな~。
・自由の国は~、労働日の短縮こそ、その根本条件である。
・労働者を取り巻く状況は、いっそう悪化した。
・新自由主義的反革命と、労働運動側の無力化のせいで、このような状況に連れ戻されてしまった。
●第6章
・安価な諸商品が、労働者階級の生活コストを引き下げるからである。
○日本のデフレ時代もそうだった。
・労働力価値を、低く維持することができる。
・機械は、価値の源泉ではない。
・労働者は、生産性上昇から、利益を得ることができなくなった。
・労働者は、自己の人格性を失い、単なる可変資本になる。実質的包摂と呼ぶ。
・労働の単調さを打ち消すために、「品質サークル」を導入したり、多様な職務(タスク)を課したりすることによって、効率性と労働生産性を高める試みは、資本主義企業によってなされた多くの実験の中心をなすものであった。
○日本のOJT研究における「浅いローテーション」「深い問題解決」とかも、労働の単調さを打ち消すためとも言えるのかもな~。
・ジャストインタイム生産というイノベーションにより、在庫を持つ必要がなくなった。
・いかに、時間と空間とを配置し、それを理解するのか。
●第7章
・マルクスは、自分の仕事を、ダーウィンの仕事の一種の接続であるとみなした。
・マルクスは、マルサスを容認することができなかった。
・マルクス主義にシンパシーを持つことは、その人の職業的将来を、さらには個人的将来さえ危うくしかねない。
○これを、なんとなく感じているから、マルクスを遠ざけてきたのかも。こんなにも学びがあるというのに。
・6つの要素
・成長は、必然的で「善」だとみなされている。ゼロ成長は、深刻な問題のシグナルだとみなされている。日本は、この間、殆ど成長していない。
○ここだよな~。だから「成長=拡大」を目指さず、「小さく始めて、大きくせずに、長く続ける」地域でのミニ起業という形を示したい。成長=成熟? 拡大ではない別の価値観を。
●第8章
・すべての産業世界が、必ずしもマンチェスター型ではなかった。
・1960年代以降の韓国資本主義は、マンチェスター型だったが、香港はよりバーミンガム的だった。
・資本主義的生産様式の技術を取り上げて、それを用いて社会主義を建設しようとするなら、何を実現することになるだろうか。
・ソヴィエト連邦において、フォード主義的技術を普及することで、傾向的に生じたことである。
・私は「資本の限界」において、地理的拡張と長期的投資が、資本主義の安定化にとって決定的役割を果たすという論点を理論化することになった。
・日本の自動車産業は、自動車の部品をつくる下請け家内工業の広大なネットワークに依存している。「恥知らずな搾取」がこのような家内工業の「近代的」形態には特徴的である。
・資本は、「訓練されたゴリラ」に相当する従順な労働者を欲する。同時に、フレキシブルで適応能力を持ち、教育された労働者という別の種類も必要とする。
●第9章
・多くの労働者は、工場の中にはおらず、外部委託や下請けに依拠する傾向がますます進行している。
・労働者は、自分自身を支配する手段を生産している!これが「資本論」全体を通じて繰り返されているテーマ。
・蓄積のための蓄積を満足させるために、ありとあらゆる災厄的な環境問題や健康問題を引き起こしている。
●第10章
・資本家が何よりも関心を持っているのは、利潤量である。
・「オスのミツバチ(金持ちの怠け者)」は、貧民を是が非でも必要とする。
・A.スミスは、国富を増大させることができるなら、最貧困層を含む全ての人は結局豊かになれると示そうとした。
・流動的、潜在的、停滞的過剰人口
・プロレタリアートの益々進行する窮乏化こそが、資本主義的蓄積の社会的に必然的な帰結である。
・失業率の上昇は、労働者階級の力を弱める実に効果的な方法だった。
●第11章
・市場交換の見えざる手から、万人の利益を引き出そうとするスミス的ビジョンを壊滅的に転倒。
・資本主義は、一商品(労働力)に依存している。
・労働者を、資本の規律装置へと社会的に順応させるための暴力は、最初はあからさまなものだった。
・自分たちのために働く「自由な」労働者が見つけられない限り、資本家にはなりえない。
・資本は物ではなく、物によって媒介された人と人との社会的関係であることを発見。
・本源的蓄積の継続は、主として周辺地域で起こる。
●終章
・「資本論」をもう一度読み直すというのは、非常に良い考えである。
・蓄積のための蓄積、生産のための生産は、ブルジョアジーの歴史的使命となり、永遠に福利成長率を生み出していく。
・自然における種々の制限を「資本主義の第2の矛盾」と呼ぶ。
・上昇する利潤率によって得られる利得が、全体でシェアされるのではなく、上層階級に完全に集中される。
○竹中平蔵さんは「トリクルダウン」と言ってたけど、結局それは起きなかった。
・「階級」は、権力の側が、誰にも真面目に取り上げてもらいたくないと思っている一範疇である。
●訳者解説
・資本論を読み解く理論的機軸
1)階級闘争 2)諸契機の弁証法
・「拡大再生産による蓄積」と「略奪による蓄積」
・最大限を超えた労働時間の延長は、略奪による蓄積へと直接転化させる。
・6つの契機
1)技術 2)自然との関係 3)労働過程ないし生産過程 4)日常生活の生産と再生産 5)社会的諸関係 6)精神的諸観念
・これらの諸契機は、相互作用しながら対立的に変化し、共進化していく。これが諸契機の弁証法である。
・伝統的マルクス主義の「土台‐上部構造」モデルよりも包括的で、応用可能性も高い。
・原発事故は、現代資本主義のシステムが生んだ人災である。
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○いよいよ今日(5月18日)から、マルクスの「資本論」に挑む!大変そうだけど、楽しい旅になりそう。
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●参考:
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