【木曜日24-18】マルクス・エンゲルス本(1)

木曜日

○まずは、初期マルクス本に挑戦!(4冊)

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『ユダヤ人問題に寄せて/ヘーゲル法哲学批判序説』マルクス(著)中山元(訳)(2014)

●解説

・1841年~1845年、初期マルクスの思想
・マルクスは、急進的な民主主義者

・マルクスが、学位論文でやろうとしたことは、ヘーゲルのエピクロス評価を覆すこと。

・マルクスは、ヘーゲルの概念に、哲学者という身体をもたせる。
・理念には、それを体現する身体が必要であり、それが賢者である。

・マルクスは、バウアーと親しい間柄にあり、思想的に互いに影響を与え合っていた。
・バウアーの論文「ユダヤ人問題」を批判する。

・シュトラウスは、福音書の記述は、神話に過ぎないことを明らかにした。
・バウアーは、キリスト教を根絶することを目指していた。宗教を哲学の支配下に置こうとした。

・ヘーゲルが語らなかった真意を語ることこそが、真の意味でヘーゲルを継承することだと、マルクスは指摘する。

・ヘーゲルは、ある局面では、哲学は宗教としての意味をもつと考えていたのである。

・マルクスが考察したのは、地元の農民たちが、共同体の入会地において、材木の枯れ枝を集めて薪として使用することを「窃盗」として非難し、それを取り締まることを求める土地所有者の主張である。
・農民を軽犯罪者に追いやるような法律の運用が問題であり、さらにそのような社会的なあり方こそが問題なのである。

・自国の政治に絶望し、他者に対して、その恥辱を感じるということは、マルクスにとっては、ドイツでも国民が「公民」になり始めたことを意味するのである。
・「恥の感情は、既に一つの革命なのです」

・「ヘーゲル法哲学批判序説」のマルクスは、社会改革を求める急進的な民主主義の立場から、国家と社会の根源的な革命を求める共産主義の立場へと移行するのである。

・マルクスは、ヘーゲルの主張するような身分の差異に基づいた二院制(上院、下院)の議会ではなく、代議制に基づいた一院制の議会を提唱するのである。

・アイザイア・バーリン以降、二つの自由の概念が明確に異なるものとして区別されている。
 1)Freedomを意味する「~への自由」
 2)Libertyを意味する「~からの自由」

・「社会がユダヤ的なあり方から解放される」必要がある。

・悲劇は、二度目には喜劇として演じられる。

・「哲学を実現する」ためには「哲学を廃棄する」ことが必要なのである。

・ラディカルであるということは、ものごとをその根(ラディクス)で捉えるということ。

・資本主義社会を分析する経済学の研究こそが、市民社会と国家の分裂を解消し、プロレタリアートが革命を実現するために必要な理論的な基盤を提供してくれると考えたのである。

・ブルジョワ(市民)とシトワヤン(公民)の対立を克服するためのプロレタリアートという概念。

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●本論

『ユダヤ人問題に寄せて』

・われわれは、他人を解放することができるようになる前に、まず自分達を解放しなければならない。

・宗教を前提にしている国家は、まだ真の国家ではないし、現実の国家でもない。

・宗教が存在するということは、ある欠乏が存在するということ。

・人権は、人間に生まれながらにそなわるものではなく、これまで人間が育ってきた歴史的な伝統との闘いのうちで勝ち取られてきたものである。
・信仰の特権は、普遍的な人権の一つである。

・自由とは、他者を侵害することのないすべての行為をなす権利である。

・貨幣が世界を支配する力となった。
・実利的な欲求とエゴイズムの神は貨幣である。

・ユダヤ人が社会的に解放されるということは、社会がユダヤ的なあり方から解放されるということである。

『聖家族』第六章

・バウアー氏は、政治的な解放を、人間的な解放と混同している。

・市民社会の奴隷制こそ、その外見から見ると最大の自由である。
・市民社会の無政府状態こそが、近代の公的な状態の基礎である。

『ヘーゲル法哲学批判序説』

・宗教が人間を作るのではなく、人間が宗教を作るのである。

・宗教という精神的な香りを放っているあの世界との闘いでもある。
・宗教は圧迫された生き物のため息であり、無情な世界における心情であり、精神なき状態の精神なのである。宗教は民衆の阿片なのだ。

・哲学を廃棄したければ、哲学を実現するしかないのである。

・プロレタリアートとは、自然に発生した貧困ではなく、人為的に作り出された貧困によって生み出された人間集団である。
・プロレタリアートは、私有財産の否定を要求する。

『マルクスの学位論文の序文』

・キリスト教の教父たちは、エピクロスをまったく禁止してきた。

・プロメテウスこそ、哲学の歴史のうちでもっとも聖なる者であり、殉教者である。

『マルクスの1843年のルーゲ宛て書簡』

・ある国のすべての国民が実際に恥の感情を抱いたとすれば、それは跳躍するために身を引き締める獅子のあり方と言えるでしょう。

・自分の罪が赦されるためには、人類は自分の罪をそのままに告白するだけで良いのです。

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『経済学・哲学草稿』マルクス(著)長谷川宏(訳)(2010)

●解説

・一冊の書物としては、はなはだ中途半端な不完全な作品である。

・マルクスの青年期の輝くような思考や思想を見つけることができる。
・青年マルクスが、経済学と哲学の交叉点に身を置いて、社会の現実にせまろうとしている。

・「疎外」は、肯定、否定の両面の意味を持つ用語
・内面の思いを外へと押し出し、外界において実現するという意味での「疎外」ないしは「外化」
・労働の生産物が、つくり出した労働者とは別の人間の所有物となり、当の労働者にとって、よそよそしいものとなること。それが否定的な意味での「疎外」ないし「外化」だ。

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●本論

『経済学・哲学草稿』

・労働者にとっては、資本と土地所有と労働が切り離されていることが致命的なのだ。

・社会の富が崩れていくとき、もっとも被害を蒙るのが労働者だ。

・資本の蓄積は、分業を促進し、分業は労働者の数を増加させる。

・国民経済学の知る労働者は、働く動物でしかなく、ぎりぎりの肉体的欲求を満たせばすむ家畜でしかない。

・延々と続く単調な作業は、精神にも肉体にも毒である。

・資本とは、労働と労働生産物に対する支配である。

・資本家の動きを抑えて人々を助けてくれるものとしては、競争しかない。

・多方面の蓄積は、必ず少数者の蓄積へと転じてしまう。

・地主の権利は、略奪に発している(セイ『経済学概論』)

・最終的には、資本家と地主の区別は消滅して、全体として2つの階級-労働者階級と資本家階級-しか存在しなくなる。

・私有財産の根ともいうべき土地所有。

・商品をたくさん作れば作るほど、かれ自身は安価な商品になる。
・労働者が対象を生産すればするほど、所有できる対象はそれだけ少なくなり、かれは自分の生み出した資本にそれだけ大きく支配される。

・労働者は、労働の外で初めて自分を取り戻し、労働の中では自分を亡くしている。

・疎外された労働は、人間から類を阻害する。

・資本家は、原則として賃金の引き下げによってのみ利益を上げることができるとした。

・なにかを自分のものだと感じるには、それを所有しなければならない。

・感覚は、すべての学問の土台でなければならない。

・共産主義は、次なる未来の必然的な形態であり、エネルギーに満ちた原理ではあるが、それ自体が人間の発展の目標ではないし、人間社会の形態ではないのだ。

・ヘーゲルには2つの欠点がある。

・国民経済学の道徳は、かせぐことであり、労働と節約であり、冷静であることだ。

・お金は、何でも買えるという特性をもち、すべての対象をわがものにできる、という特性をもつのだから、すぐれた所有物という資格をもつ対象である。

・「(金貨)お前は、目に見える神だ」
・お金は、どこにでも登場する娼婦であり、どこにでも登場する人間と国民の仲介役である。

・精神が真に精神を知るといった事態は、学問においてしかなりたたない。

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『ドイツ・イデオロギー』マルクス/エンゲルス(著)廣松渉(編訳)小林昌人(補訳)(2002)

●解説

・本書は「唯物論的歴史観 誕生の書」として知られている。

・本書は、ドイツ的「哲学」とドイツ的「社会主義」に対する両刀的批判として計画されたのであった。

・ヘーゲル学派を、右派、中央派、左派に分類。

・1843年の転換後、ヘーゲル左派の「理性国家」論は急速に萎えていった。

・マルクスとエンゲルスは、フォイエルバッハに対する思い入れ=読み込みから醒め「哲学的共産主義」から脱却する必要性を感じ始めていた。

・真正社会主義とは、フォイエルバッハ哲学をベースにした社会主義である。
・「共産党宣言」の中でも、真正社会主義に対する警戒心が表明されている。

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●本論

・妻と子供達が夫の奴隷であるような家族の内に、すでにその萌芽、その最初の形態を持っている。家族内における、もちろんまだ極めて粗野で潜在的な奴隷制、これが最初の所有である。

・僕らが共産主義と呼ぶのは、現在の状態を止揚する現実的な運動だ。

・歴史は、個々の世代の連鎖にほかならず。

・大衆的規模での人間変革が必要である。

・批判ではなく、革命こそが歴史の駆動力である。

・人間が環境を作るのと同様、環境が人間を作るのである。

・所有の第一の形態は、部族所有である。
・第二の形態は、古代的な共同体所有および国家所有である。
・第三の形態は、封建的ないし身分的所有である。

・分業がどの段階にあるかは、その時々の生産力の発展に依存する。土地所有、共同体所有、封建的所有、近代的所有、身分的所有、マニュファクチュア所有、産業資本。

・神学の否定が、近代の本質である。

・哲学者たちは、ただ世界をさまざまに解釈してきたにすぎない。肝心なのは、世界を変革することである。

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『共産党宣言』マルクス/エンゲルス(著)森田成也(訳)(2020)

●解説

・1848年、世界そのものはまだ資本主義化するにはほど遠く、日本は江戸時代であった。

・「共産党宣言」は、資本主義の世界的制覇の必然性を予見。

・労働者階級の最終的解放は、資本主義の転覆なしには不可能であり、そしてそれは他ならぬ労働者階級自身の事業である。

・世界史を変えることになるわずか23ページの文書。

・資本主義は過剰生産に悩む。

・ケインズ主義は、ブルジョアジー側の矛盾を媒介する主要な手段であったし、福祉国家はプロレタリアートの側の矛盾を媒介する主要な手段であった。
・新自由主義は、これらの媒介手段を破壊することで、再び資本主義の諸矛盾がより直接的に露呈する方向へと動いている。

・協同社会の言語であるAssoziationは、フランス語からの輸入語であり、ドイツ語でいうと「ゲマインシャフト」に相当する。

・翻訳=別の言語での内容の再現

・日本における「共産党宣言」の翻訳は、1904年に堺利彦と幸徳秋水によって英語版に基づいてなされたのが最初である。
・あまたのマルクス主義文献の中で、日本の官憲当局が最も危険視したのが、この「共産党宣言」であった。

・世界的に見て、日本の異常さは際立っている。日本はまるで、労働者の大規模な反抗を作りだすことなく、労働者に対する搾取といじめがどこまで遂行可能であるかの壮大な社会的実験を行っているようなものだ。

○これ、ほんとそうだし、まさに恥ずかしいこと。

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●本論

『共産主義の原理』

・プロレタリアートとは、生活の糧をもっぱら自己の労働の販売から得ていて、何らかの資本の利潤から得ているのではない社会階級のことである。

・プロレタリアが自己を解放することができるのは、私的所有一般を廃棄することによってのみである。

・ほぼ規則的に5年から7年ごとに、このような恐慌が発生している。

・競争を廃棄し、それに代えて協同社会(アソシエーション)を成立させるだろう。
・すべての生産用具を共同で使用し、万人の合意にもとづいてすべての生産物を分ちあう制度、すなわちいわゆる財貨共有制が登場するだろう。

・最終的に、すべての資本、すべての生産、すべての交換が、国家(Nation)の手に集中されるならば、私的所有はおのずと没落し、貨幣は余計なものとなるだろう。

・共産主義的に組織された社会は、各成員に、自らの素質を全方面に発達させ、それを全面的に働かせる機会を与えるだろう。

・誰かの欲求を満たすために、他の人々の必要を犠牲にするような状態をなくすこと。

『共産党宣言』

・共産主義の妖怪というおとぎ話に党自らの宣言を対置すべき時である。

・これまでのあらゆる社会の歴史は、階級闘争の歴史である。

・アメリカ大陸の発見とアフリカ航路の開発は、台頭しつつあったブルジョアジーに新天地を切り開いた。

・過剰生産という疫病。

・あらゆる階級闘争は、政治闘争である。
・法律の形で労働者の個々の利益を承認させる。

・ブルジョアジーは、何よりも自分自身の墓掘り人を生産する。ブルジョアジーの没落とプロレタリアートの勝利はともに不可避である。

・共産主義者は、教育から支配階級の影響を取り除くのである。
・単なる生産用具としての女性の地位を廃止すること。

・諸階級と階級対立をともなう古いブルジョア社会に代わって、各人の自由な発展が万人の自由な発展の一条件である協同社会が登場する。

・共産主義者は、所有問題を、それがどれだけ発達した形態を取っているかにかかわりなく、運動の根本問題として前景に押し出す。

・プロレタリアは、この革命において、鉄鎖以外失うものは何もない。彼らが獲得するのは、全世界である。
・万国のプロレタリア、団結せよ!

○やっぱり力ある本だよな~。

『共産党宣言』各版序文

・「宣言」は歴史的文書であって、われわれにはそれを変更する権利はない。

『共産党宣言に関するマルクス、エンゲルスの手紙の抜粋』

・君(マルクス)は、二つの世界(新世界と旧世界)から同時に攻撃されるという誇るべき地位にある。

・プロレタリアートの勝利の後に、勝利した労働者階級がその使用のために見出す出来合いの唯一の組織が、まさに国家なのです。

・サム・ムーアは、私の知っている限りで、最良の翻訳者ですが、仕事の報酬を何も得ないで、仕事をするような地位にはありません。

○エンゲルスさんの誠実さが見えるな~。この一文で、エンゲルスさんを好きになった。この人の単著も読んでみよう。

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投稿者:関根雅泰

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