○増田先生のセミナー「企業内での若者育成について考える」に関連して読んでいる本 (2冊)
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『副業の研究 多様性がもたらす影響と可能性』 川上淳之(2021)
・2017年、副業をしながら働いている人は、約267万人。有業者全体の4.05%。
・2018年に改正されたモデル就業規則により、副業は、原則禁止から、原則容認へ。
・副業の問題は、ワーキング・プアの問題ともいえる。
・副業のU字カーブ
・2017年の副業政策の目的は、オープンイノベーションの促進であったが、1925年の副業政策は、農村の困窮への対策だった。
・Multiple job holders 副業を持つ人
・Moonlighting 本業の後に夜間に行う副業
・Perlman(1966)によれば、副業は、短時間労働問題といえる。
・Kawakami(2019)は、Panos et al.(2014)と同様に、副業を保有しているほうが、本業の賃金率を上昇させていることを明らかにしている。
・起業の準備としても副業が効果的であることを示唆。
・Lazear(2005、2016)は、起業家が様々なスキルを求められる「何でも屋 Jack-of-all-trades」であるという側面があることから、過去のビジネスにおいて中心的な役割を多く経験している個人の方が、起業家になる傾向があることを明らかにしている。
・村上(2017)は、副業起業をしながら専業に移行する場合、失敗のリスクを低下させることを明らかにしている。
・本業で1000万円以上の収入を得ている副業保有者
・本業で足りないものとは、やりがいでも成長の機会でもなく、圧倒的に「収入」だった。
・多くの副業は、本業で足りない収入を補うため。
・「非典型時間帯」の就労が、子供のウェルビーイングに与える影響が問題視される。
・本業のテレワーク利用が、副業を促進する効果を持つ。
・副業就労に、自己啓発的効果が含まれることが示唆される。
・社会人が参加する学校の役割。
・ある程度の仕事経験をもった上で(学校に)参加することは、新たな仕事の機会を得るチャンスになるのかもしれない。
・職業分類:
1)Motor-task 運動的職業 2)Analysis-task 分析的職業 3)Interaction-task 対話的職業
・副業をもつことが、本業のパフォーマンスに与える影響は、特に、分析的職業(管理職、専門職、情報技術従事者)で、その効果が確認される(Kawasaki,2019)
・副業の保有を通じて、本業のパフォーマンス(賃金率という指標で見た場合に)分析的職業において高まるということが分かった。
・すべての副業保有者に、越境的学習としての副業経験は行われていない。
・能動的に、意識的に、本業に持ち帰っていない限り。
・労働基準法が定める原則1日8時間、週40時間という労働時間に関する規制は、本業と副業の労働時間を合算したものとして考えなければならないものなのである。
・副業を持つことによる長時間労働が、従業員の健康を損なってしまう可能性。
・過労死等防止に関する国の目標として、週当たり労働時間60時間以上の雇用者を減らすことを掲げている。
・週当たり労働時間が、60時間を超えている割合は、副業保有者で、17.7%であった。
○ランチェスター「人の3倍働く」3,200時間だと、週60時間×52週。俺もこのぐらい働いているな~。
・1990年代末以降に蓄積された実証研究は、自営業主が、雇用者と比べて、収入は低いにも関わらず、仕事に対する満足度が高いことを発見している。
・自営業主は、独立的に働いている。
・収入目的の起業では、副業非希望者のほうが、幸福度も満足度も高い。
・本業の待遇改善の方が望ましい。
・週当たりの労働時間が、55時間を超えるあたりから長時間労働であるほど仕事満足度が高まっていく一方で、メンタルヘルスについては、労働時間が長くなるほど悪化してしまう。
・自分の健康に対する過剰な自信 Overconfidenceと、現在の状態が今後も続くと考えるバイアス Projection biasが影響している。
○これは、俺も気を付けないとな~。確実に、60時間ぐらいだし、仕事満足度は高い。だからこそ、心身の健康維持のためにも「自分で時間をコントロールする」「日々の山歩きとプールを続ける」ことが必要なんだろうな~。
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『一人前と戦後社会 対等を求めて』 禹 宗杬・沼尻 晃伸(2024)
○新聞の書評で見つけた本。
・世間が求める「普通≒人並」と自分との距離感が、ひきこもりの原因。
・日本のパートは、社会的には「半人前」なのである。
・「暮らしの場」「働く場」
・主に大企業がその対象となる為、「地元型(小熊2019)」が対象から抜ける。
参考:
『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学 (講談社現代新書 2528)』のレビュー 小熊英二 (関根雅泰さん) – ブクログ (booklog.jp)
・1960年代を境目に、以前にはホワイトカラーに対してだけ行われていた新卒定期採用が、ブルーカラーにまで広がることとなった。(菅山2011)
・労働者が、企業の中に留まりながら、賃金上昇と昇進をはかる「労働市場の内部化」が、大企業の範囲を超えて、日本社会全体に広がった。
・企業の人事実務では、勤続年数12年目あたり(指導員になる前)が「一人前」になる境界線と思われていた。
・一般職に就く人を、一人前として取り扱わない姿勢を示した。
・政府の政策は、企業を媒介とした保守主義を継承。
・企業の人件費負担を軽減。負担の軽い非正規雇用を増やした。
・正規と非正規の間に断層。
・日本政府は、意欲ある個人による働くことへの主体性の発揮が、本人にとっての「生きがい」と意識されるような社会の創出を、政策目標に掲げた。
・集団の中での多様性を認める
・「主体性の罠」が、働く女性の一人前化を妨げている。
・暮らしの場では、多くの人々が「自分らしさの罠」に陥っている。
・国が人々の価値に直接介入するのは危ないといえる。
・日本の長所:
1)一人前の基礎に「労働」を置くたくましさ
2)「話し合い」という具体的な行為を編み出す巧みさ
3)与えられた概念を「逆手」にとって自分のものに変換するしたたかさ
・自ら向上しながら、他の人の価値も同時に認めること。
・シングルステータス化において、労働者側が逆手にとっているのは、「ダイバーシティの尊重」である。
・単に新自由主義的な効率性重視の考え方が、日本社会を変えていったわけではない。
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