
○読書会議で、林さんにお薦め頂いた『人民は弱し、官吏は強し』から辿り着いた(3冊)
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『祖父・小金井良精の記』(1974)
・祖父から老醜という印象を受けたことがない。年齢に不相応な欲望がどこかに残っていると、それが老醜となる。祖父にはそれが無かった。
・他人行儀という言葉があるが、他人で構成されている家だからこそ、礼儀が必要だった。
・他家に養子に行ける第一条件は、学問武芸もさることながら、礼儀作法だった。
・佐久間象山「大塩平八郎は、学があるのに、陽明学にかぶれた為、ああなった。真理を求めることがなによりも先決。それが朱子学。」
・小林虎三郎「教養を広め、人材を育て上げれば、国は日ましに富み栄え、兵は日ましに強くなり、以て五洲に雄飛するにたらん」
・山本有三『米・百俵』 「小林(虎三郎)大参事が、百俵の米を売り払って、その金で学校を作る企画を立てた。」
・小林虎三郎「われわれの手でやる以外にない。この百俵で学校を作り、子弟を学ばせ、将来において何万俵もの価値を生み出させようではないか」「飯が食えないからこそ、食えるようにするため学校を作るのだ」
・大学の赤門前などは、まるで田舎であった。「兼安までは江戸のうち」で、その先だから、どうしても宿場だった。
○東大大学院に通ってた頃(2010年~2013年)この看板あったな~。今もあるのかな?
・日記を通読してみて、物語と人生の差がよくわかった。物語には適当なクライマックスがあり、適当な区切りがある。人生はそうでない。さまざまな事柄が、主人公の身において、いくつも同時に進行しているのである。
・プロイセンはフランスと戦い、ナポレオン軍に大敗し、かなりの領土を失った。しかし物質的に失ったものを、精神的な力によって補おうではないかと、国王フリードリッヒ・ウィルヘルム三世によって、大学設立が計画された。戊辰の役のあとの小林虎三郎と同じ考え方である。
・(学生に教えるにあたって)想像力をかきたてるようつとめている。この入口において、医学への情熱を持たせることは重大だからである。
・解剖学者たるには、仙人のごとき忍耐心、芸術家のごとき巧妙さ、豚の胃のごとく汚れる覚悟、この3つが必要である。
・長く生きるにつれ、必然的に伴う苦痛のひとつに、親友の死がある。
・形態的(自然)人類学と、精神的(文化)人類学の区別を、良精は初めて提唱した。
・大正15年9月5日、星新一誕生。
・(良精の)研究の結果によると、アイノ人こそ、本邦の先住民族であるということになる。
・「日本民族なるものは、どこから来たのか」それを明らかにすることが、わたくし(良精)の畢生の研究課題。
・人類は、進化するにつれ、下あごが退化するのでは。
・現在の日本人は、アイノとの混血の上に成立している。これが良精の自説だった。
・一般に、学者や官吏の随筆がつまらぬのは、自己の欠点に気づかぬのか、目をつぶってか、決してそれにふれないためである。
・(良精が)天照大神と素戔嗚尊の夫婦説を提唱。
・筑紫と出雲とに異なった民族の集落があって、両者融和の一策として、この2神が、ご夫婦になられたが、結局上手くいかなかった。
・二派の交渉が、古事記のなかにもうかがえると述べておられる。
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『星新一 1001話をつくった人(上下)』最相葉月(2007)
・「人間の思考は、光より速いということになるぞ」 根底から発想を転換することによって固定概念を覆し、新たな地平に目を向ける。
・星一「死なないことに決めている」
・星一の、災いも一瞬にして好機とみなす持ち前の楽天主義は、満州を新天地とした。
・一つの選択肢がつぶされても次を探し、即座に行動する。
・ワンマン星一は、自分の発想を実現するために、イエスマンばかりを、経営陣に据えていた。あるいは、星一の前に立てば誰もがその勢いにのまれて、イエスマンになってしまった。
・科学技術が爆発的に発展している現代においては、未来はすぐに現実のものになる。
・人類の未来そのものを指し示し、文明の根本的批判者になってほしい。
・ギリシア時代から存在した仮説文学の系譜。
・仮説を持ち込むことによって、人間の存在がいかにひび割れ、安定感を失うか。
・星新一は、SF作家というよりも、新しい文化とスタイルを輸入した人。
・父の発言や計画は、吸収した知識を自分なりの判断で基本から再編成し、その結論としてのものだったのである。いわゆる思い付きといったたぐいとは、本質的に違っていた。
・作家は論争など早々に切り上げ、自身の創作に専念するのみ。読者を獲得しなければ意味はない。
・三つの禁じ手を課していた:
1)性行為と殺人シーンの描写をしない 2)時事風俗を扱わない 3)前衛的な手法を使わない
・差別にこそ究極の笑いがひそんでいる。
・新井素子「痛み止めが効くまでの時間、痛みを忘れさせることのできるものを書きたい」
・アイデアとは、異質なものを結びつけるところから発生する。
・存命中ならまだしも、没後なお読み継がれる作家は、ごく一握りに過ぎない。
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