「経験学習とリーダーシップ」勉強会(2)

東大大学院

2016年11月24日(木) 初雪が舞う中、
東大で、「経験学習とリーダーシップ」勉強会(2)を開催しました。
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https://www.learn-well.com/blog/2016/09/post_473.html
今回は、第3部、第4部です。

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『経験学習によるリーダーシップ開発:
米国CCLによる次世代リーダー育成のための実践事例』(2014)
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(・本の中で印象に残った部分の要約 -勉強会で出た意見)
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●第3部 人材育成制度 - 経験に基づく能力開発の設計
47~51は、関根が担当。
レジュメを見る

●クラスでの意見交換
-外資では、中途向けに、Newcomer welcomeプログラムをやっている所が多い
 ただ日本の新人導入教育の方がオンボーディングのノウハウは多いかも
-ストレス耐性をチェックし、下がっている場合は、マネジャーが支援
-事業部マネジャーの立場から見ると、こういう新リーダーの同化は
 やってほしい。
-自分の今までのマネジメントスタイルでは通用しないということに、
 なかなか気づけない。最初に気付かせたほうがよいかも。
-上司と部下の関係性をコーチが支援。
-キックオフの文化がある会社だと、新リーダーの同化はやりやすいかも
-上が変わったとき、部下は様子見をするので、停滞期間が生まれる。
 もったいないので、こういう新リーダー同化があってもよいのでは。
-コーチや講師がもっているノウハウが、この同化支援に役立つかも。

52.
・リーダーには他のリーダーを励ますコーチになってもらいたい。
・優秀なコーチは、内省に優れた人間。
53.
・最大の難題は、部下にふさわしい課題の見分け方。
・「適切な難問」であるかどうかを見極める質問:
 この課題を引き受ければ、部下はリーダーとして成長し続けるのに、
  必要な能力を高めることができるのか?
 この課題は、リーダーとしての部下の長所を活用できるのか?
 部下が最も意欲を示す課題は何か?
54.
・最も能力開発的な話し合いは、正式ルート以外で起きる。
・話し合いの組み立て方としての「GROWモデル」
55.
・業績管理とリーダーシップ開発は、切り離して考えられるものではない。
 二兎を追う文化を創る
・対立状態の解決に利用させる3つの方策:
 1)メタ(一つ上)の立場にたって、目的を探す
 2)一方を選び、他方の短所を減らす
 3)乗り越える提案を探す
56.
・業績管理制度は、リーダーにとって翌年度の業績目標と今後の課題に
 対処するために自己成長の方法を考えるのに適切な機会
・話しあいを二つに分けて行う。
・社員育成優先のために戦う者がいなければ、社員育成は業績によって
 完膚なきまでに打ち負かされてしまう。

●クラスでの意見交換
-360度評価は、業績管理ではなく、育成目的に使っている企業が多い。
-360度を人事考課で使っている企業も少数ながらある。
 研究では、使わない方が良いという知見が多いが。
-360度をどういう意味、位置づけでやるか。
-目的は「能力開発」と言っても「結局、人事考課に使うんでしょ」と
 疑われるケースもある。
-数字はコントロールできるので「こんなのあてにならない」という
 不信感を持たれている場合もある
-職場評価が高すぎる場合も危うい。
 チームの仲が良くても、業績達成できてないところもある。

57.
・教室外での学習を促進するトレーニング
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58.
・実際の経験をトレーニングに導入する
59.
・「学習-適用-指導」手法
・マイペースで学習を進められるワークブック。受講者は何度も読み込む。
60.
・相当な量の事前課題を仕上げてもらう。
・SNSで、オンラインプログラムでかけやすい「社会的学習」の内容を
 深める
・事前課題の利用を成功させる7つのヒント
 1)事前課題という言葉を使わない
 2)受講者に負担をかけない
 3)完成日程を提供する(解題が仕上がると期待されるペースを提示)
 4)開講初日にテストを実施
 5)事前課題の理由を伝える
 6)講義で事前課題の成果を利用する
 7)経過ではなく、結果に集中させる
61.
・経験は、2種類のリーダーシップ開発(ひらめきの促進と能力の開発)に
 きわめて有効。
62.
・メンターは、弟子のキャリアアップを支援する
 1)メンターが持つ組織内の影響力を用い弟子を出世させ、保護する
 2)ストレッチ課題、コーチング、フィードバックを与える
 3)個人的な支援や友情を与える
・メンタリングが組織内で起こらない理由
・プログラムの成果として、最終的に達成したい結果は何か
・プログラム受講者用の「出口戦略」を用意すべき。
・メンタリング計画の例:
 1)目標 
 2)予想される課題 & 課題に向けた事前計画
 3)メンターの責任 & 弟子の責任

●クラスでの意見交換
-「70:20:10の法則」は、ロンバルド社が、200名に話を聞いた結果
 「だいたいこんな数字では」と提示したものなので、学術的裏付けはない
-日本企業の人材開発担当者に聞くと、経験が60~90%の重要性と出る。
 新人だと、上司の%が高く出る。
-「ナナメの人」をつけるだけでは、メンター任せになってしまう。
-新人向けメンターは、離職防止等、心理社会的支援を期待。
 キャリア的機能のスポンサーまでは期待されていない。
-毎月1万円支給して、新人とメンターが食事に行くよう促している企業もある
-新人だけでなく、メンターを育成するコストもかかる。
-トータルにみると、メンターが育つことで、
 育成コストが下がる可能性はあるかも。
 マネジャーになる前に「他者指導経験」を積ませることで、
 マネジャーになってからの失敗可能性を減らす。
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63.
・外側から内側への話し合い
64.
65.
・グローバルビジネスは「適応を要する課題 Adaptive challenge」という
 本質がある。すなわち絶対確実な解決法など存在しない課題ということ。
66.

●クラスでの意見交換
-評価を「評価」と受け取ると、組織が止まる。
「改善点」と受け止めてほしいが。
-本書の事例はたいそうなものが多いので、導入しにくい。
 もう少し手軽に現場で導入できるものがあると。
-この項は「経験補充」系かも。第一部は「経験配分」系。
 企業の中の経験だけでは足りないので、経験を追加する。
-企業の中では、Actionは多いが、意図的なLearningが少ないのかも。
 会議等をうまくReflectionの場として使えれば、学びがありそう。
-「質問会議」は使えそう。
-就活という体験をふり返る
 参考:Active Transitionのワークショップ
     https://www.learn-well.com/blog/2016/10/post_476.html

13時~14時 東大の学食で、皆さんと昼食。
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67.
・経営者や役員の地位数の15%を有能な後継候補者グループとして用意しておく
68.
・スターは、周囲よりも素早く指導的役割を習得する傾向がある。
・経験の幅と深さ
・多様な経験を早めに積むようにする
69.
・成功の分析結果を作成
70.
・「最高の仕事と最高の人たち」という手法
 新しいポストを求めている人々に空席ポストを橋渡しする役員参加の研修会
・必要な仕事を割り当てることで、有能な候補者を育成する
71.
・多文化女性(白人以外の女性)は、隠れた宝

●クラスでの意見交換
-日本は、人事異動、ローテーションが得意。
 経験はさせられるが、そこから学ばせることは不得手かも。
-良い経験と人材のマッチング
-ただ、マッチングがはたして正しかったのか評価するには、
 その後を追っていく必要があるのでは。
-マッチングが上手くいったのか、その職場の育成が良かったのかが
 見えにくい。
-人事が現場を知らないと、異動、ローテーションのタイミングはつかめない
-「誰が良質な経験が何かを把握しているのか」問題。
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●第4部 組織 - 経験に基づく能力開発を支えるもの
72.
73.
・「and組織」短期と長期をバランスさせた視点でフレキシブルな方法を
 使って結果をだし、実行力をもったリーダーを生み出す。
 「or組織」長期的なビジョンに対して短期の成果を狙うことで困難が
 生じてどっちつかずになり、結局短期も長期も目標達成できない。
・and型リーダーたちは、計画的に出会いが用意されている職場で能力を
 磨いていく。
74.
・2年以上継続している戦略は成功だとみなされる
・自発的OJDのための5つの設計要素
  戦略性、体系性、簡潔性、伝染性、継続性
75.
76.
・長続きする人事制度の成功要因
 1)組織 2)介入 3)介入リーダー

●クラスでの意見交換
-民間企業と学校組織に関して

77.
・「成長と仕事は別物」という考え方が染みついている
・日常業務の大半に自らを成長させる機会がある。
 見方を変えれば、日々の仕事は自己啓発に役立つ。
78.
・物語や引用は、感情レベルでリーダーに共感することができる
・キャンベルの「英雄の旅」
79.
・内部労働市場に着目し、学習の効果を見る
・キャリアに対する学習の影響力
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80.
・脱落 derailment
・脱落者の特徴
 1)対人関係の問題 2)チーム指導の難しさ
 3)変化や適応の難しさ 4)事業目的の未達 5)過剰な役割適応
・成功者
 1)業績 2)冷静沈着 3)過ちに対する処理 4)問題の追及
 5)対人関係のあり方
・出世が早すぎると、経験から学ぶ時間が足りなくなる
81.
・人事異動は、リーダーシップ開発手法の一つ。
・ただ、政府高官の異動を阻害する要因が多い。
82.
・人材エコシステム(生態系)
・社員をパートナーに出向させ、所属組織では味わえないような経験をさせる
・組織を越えて、育成機会に触れる

●クラスでの意見交換
-ストーリー(物語)を語ることで、自分の考え、感情が整理される
 ストーリーを聞くことで、聞き手は納得度が高まる
-過去の経験、体験談を、ストーリーとして語る
-ストーリーは、自分事、感情、細かい出来事も含まれる
 ストーリーの構成も大事。本人の等身大さが伝わるよう。
-誰が語るかにもよる。
-「しくじり先生」はかなり掘っているからこそ。
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●結論
・「成長を加速させる方法」
  1)特別仕様(カスタマイゼーション)各人に合わせた内容
  2)統合(インテグレーション)仕事と学習の統合
  3)集中(コンセントレーション)集中して学習する期間
・個人が「経験からの学び方」を学ぶべき
・実務家や研究者がより協力すべき
・「70-20-10の法則」を気にする必要はない。
 経験からの学び方を、リーダーが学ぶことを手助けすることで、
 リーダーシップを開発すればよいのである。
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●ふり返り
-EBD:日々の仕事こそ能力開発のチャンス。
 起業支援における経験と内省の重要性。
-「ふり返るな!」という組織風土。ふり返ることのうま味が感じられればやる。
 ふり返りが非効率に感じられる。先に進みたくなる。
-「成長につながる経験である」と意味づける重要性。
-「型破りモデル」は参考になった。
 アセスメント結果を評価だけでなく、内省に結び付けたい。
 内省に関して、ぐっとくるのがない。中村俊介の「サッカーノート」が
 一番ぐっと来た。一流スポーツ選手は多くが作っている。
-業績と学習の両立。
伸びる奴は、勝手に経験学習を回している。
等身大のエピソードだと、他者経験から学びやすい。
-「経験配分」「経験吸収」「経験補充」という分け方が参考になった。
-自己紹介でストーリーを語ることで、自分に向き合う
-コーチングは、リフレクションする機会をつくるもの。
 PDCAを回している企業なら、リフレクションもやっているのでは。
-生命感のあるリフレクション。ワークシートだといまいち。
-ActionとExperienceの違い
 グループでのリフレクションの効果もあるのでは。
-安心安全な場で経験を語ることで、個人だけでなく組織での学習につながる
-リーダーシップ開発が、何につながるのか。
-経験学習は「勝ちながら育てる」
 強みベースで試合に出す。我慢も必要。
 1)経験の仕分け(良い経験、いまいちの経験)
 2)いまいちの場合、経験の補充
 3)経験の配分
 4)経験の吸収
 ふり返りの仕方もいろいろあるのでは。
 一人反省系や他者との語りだけではなく。
 アカデミックな知見や事例もふり返りの材料になる。
 
 ふり返るには、目標も必要。
 経験学習モデルは、本人の目標があることが前提では。
 リーダーシップについては、いまいち分からなかった。
===
終了!
(進行役の立教大 舘野先生、今回もありがとうございました。)
終わった後は、東大農学部キャンパスにあるアブルボアで、
自由参加の懇親会を行いました。
皆さん、どうもありがとうございました!
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●舘野先生のFB
   https://www.facebook.com/photo.php?fbid=1106938346021880&set=a.175392995843091.33024.100001171746344&type=3&theater 
●菊地さんが教えて下さったサイト
70:20:10 The Right Ratio… or So We All Thought
http://www.ddiworld.com/DDI/media/trend-research/glf2014-findings/702010_glf2014_ddi.pdf
Is 70:20:10 Relevant Today? Or Are We Living in the Past? – Part 1
http://www.ddiworld.com/blog/tmi/march-2015/is-70-20-10-relevant-today-part-1
Is 70:20:10 Relevant Today? Or Are We Living in the Past? – Part 2
http://www.ddiworld.com/blog/tmi/march-2015/is-70-20-10-relevant-today-part-2
The Death of 70:20:10
http://www.ddiworld.com/blog/tmi/april-2015/the-death-of-70-20-10
『しくじり先生』制作陣が語る「過去のしくじりを“愛される話”にする方法」
http://next.rikunabi.com/journal/entry/20151125_1
●吉岡さんが教えて下さったサイト
 http://deakinprime.com/media/47821/002978_dpw_70-20-10wp_v01_fa.pdf
●菊地さんのブログ 「経験学習2.0構想」
  http://dkikuchi.net/%e5%ad%a6%e7%bf%92%e3%83%bb%e6%88%90%e9%95%b7%e7%90%86%e8%ab%96/%e3%80%8c%e7%b5%8c%e9%a8%93%e5%ad%a6%e7%bf%92%e3%82%92%e3%82%b3%e3%82%a2%e3%81%ab%e3%81%97%e3%81%9f%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%80%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%83%e3%83%97%e9%96%8b%e7%99%ba%e3%80%8d%e3%81%ab-2/

投稿者:関根雅泰

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