「トランジション(移行)」本

お薦めの本

東大大学院授業「経営組織論」
(4)採用に関連して読んだ「トランジション(移行)」本。

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『活躍する組織人の探求:大学から企業へのトランジション』
  中原淳・溝上慎一 編(2014)
・「就職後しっかり職場に適応して働けているか」を射程に入れた
 トランジション研究の必要性こそが、本書の位置づけ。
・「採用・選抜」に関する先行研究:
 1)リクルーター研究
    リクルーターの活動の質を保つべき
 2)リクルーティングメディア研究
    MOOCsの学習履歴、成績も採用基準として機能
 3)現実的職務予告(RJP)研究
    過大な期待を抑制し、離職防止につながる
 4)選抜ツール研究
    仕事の状況に埋め込まれてなされる評価こそ信頼性が高い
・オンボーディングとは、組織社会化に類似する実務的概念であり
 組織が新規参入者の組織適応を促すために用いる実践、プログラム、
 人事施策を指す場合が多い。
 参考:The Oxford Handbook of Organizational Socialization Ch.14
 https://www.learn-well.com/blog/2012/09/the_oxford_handbook_of_organiz.html
・近年の組織社会化研究においては「Swift socialization迅速な社会化」
 という概念が注目されている。
 社会化のスピードを、これまで以上に、しかし精度をあげ、高速化
 するために、注目されるのが「大学時代の経験」である。
・「学士力」は「社会人基礎力」と重なる部分が大きい。
・1990年代末以降「勉学第一」「何事もほどほどに」と回答する大学生
 の割合が高まっている。「豊かな人間関係」は減少の一途。
・学生の成長を促す変数は3つ:
 ①1週間の過ごし方 ②学習 ③二つのライフ
・学校から仕事へのトランジション(移行)は「フルタイムの学校教育
 を修了して、安定的なフルタイムの職に就くこと」と定義される。
・日本で、学校から仕事へのトランジションが一般化したのは、
 1960年代以降。
・出身大学偏差値、文系理系、性別によって、現在の年収が異なっている
・大学教育の内容と職業生活の関連性としての「職業的レリバンス」を 
 重視する立場が、教育社会学において主流となっている。
 参考:「多元化する能力と日本社会」
 https://www.learn-well.com/blog/2009/11/post_299.html
・「豊かな人間関係」を重視した過ごし方をしていた学生は、充実した
 大学生活を送り、 初期キャリアにおいて成功を果たしていた。
・「アルバイト、貯金」重視という過ごし方は、大学生活充実も低い。
・現代の大学生の人間関係の特徴は、人間関係の希薄化、孤立化ではなく
 むしろ親密化、緊密化の傾向が進んでいる。
・「豊かな人間関係」を重視する人が最も組織社会化していた
・企業人が組織の中で革新行動をとるには、組織社会化による信頼獲得
 が必要であることが示唆される。
・自分の成長に影響を与えた人が「異質な他者」であるほうが、組織適応
 が促されているという結果。
・今後の大学には、いかに異種混交の社会的ネットワークを発達させる
 かが課題になってくる。
・企業が「迅速な社会化」に対応していくのであれば、目指すべきは
 1)採用者の大学時代の意識、行動データを用いた戦略的な採用、選抜
 2)採用時データと入社後のキャリア発達データを合わせた採用、選抜
   と連動した人材育成 
・大学生活の重点を「豊かな人間関係」と回答した者は、最初の配属先の
 満足、そして組織社会かにポジティブな影響を及ぼしていた。
・「勉学第一」と回答した者は、初期キャリアとの関連において
 望ましい結果を示さなかった。
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『アクティブトランジション:働くためのウォーミングアップ』
  舘野泰一・中原淳 編著(2016)
・トランジションの含意するところは「最終の教育機関を終了して
 安定的なフルタイムの職業につくこと」
・アクティブトランジションとは「働くことの準備をすること」その結果
 「教育機関から仕事領域への円滑な移行を果たすこと」
・研究知見のほとんどは、実践者に還元されず、同業者に消費されるのみ
・ワークショップ
 1)就活ヒッチハイク
 2)カードdeトーク いるかも!?こんな社会人
 3)ネガポジダイアログ
○良く練られたワークショップ。
 弊社のお客様にも実施してもらったけど、好評だった。
 
https://www.facebook.com/activetransition/photos/a.798185226978938.1073741828.778013755662752/880355502095243/?type=3&theater
 
・第一次調査 2011年11月 2,652名の回答
 第二次調査 2014年3月 117名 うち 101名を分析に使用
・何事にもほどほどにバランスを取りながら生活する現代の若者
 の姿勢がうかがえる調査結果となった。
・授業外コミュニティをもっている学生、そして、大学生活が充実して
 いる学生ほど、入社後にプロアクティブ行動を行っていることが、
 明らかになった。
・参加型の授業であっても、活動を構造化しすぎることは、
 学生の主体性を奪いうる。
・男性の場合、仕事重視群のほうが、初期キャリアへのスムーズな
 移行を遂げている。
 女性の場合、仕事重視群は、高いリアリティショックを受ける一方、
 仕事意欲(組織内にとらわれず)の向上が見られた。
・就職活動中に支援者をもつことが、初期キャリアの組織コミットメントに
 直接影響を及ぼすだけでなく、就職予定先の満足度を媒介して、
 リアリティショックの軽減と組織コミットメントの向上に影響を及ぼす。
・就活の孤立化のリスクを防ぐべき。
 大学関係者の支援は、初期キャリアの適応に一定の効果をもっている。
・「不本意就職」は、就活に熱心だった分、努力が実らなかったことで、
 就活全般を否定的にとらえていた。離転職経験者も多い。
 「とりあえず就職」は、入社後に「何かが違う」という感覚を持ち、
 離転職意思が高まると考えられる。
・就職活動終了後の「ふり返り」により、就活経験を意味づけられれば
 「不本意就職」の過度な否定感、「本意就職」の過度な肯定感を、
 適正な状態に調整することが期待できる。
・就職活動を通じた学びと、入社後の能力向上との関係を分析。
 ①「職業・就業に関する視野の広がり」は、有意な関連が見られず、
 ②「不確実性に対する構えの獲得」は、有意な関連が見られた。
・①の内定者に対しては、現時点での理解にこだわらず、外部環境の
 変化に合わせて柔軟に学びなおす支援策が重要。
 ②の内定者に対しては、それが入社後の躍進を支える基盤になること
 をつたえ、保持し続けるよう働きかける支援策が重要。
・内定者フォローの目的 
 1)内定辞退の防止 2)円滑な移行
 内定時期は、その後のキャリアに大きな影響を及ぼす重大な時期。
・内定者への集合研修は、組織参入直後のリアリティショックを緩和し、
 1年後までの離職意思を抑制する。
 (内定者引き止めのみ、RJPのない)人事との面談は、リアリティ
 ショックを強化し、1年後までの離職意思を高める。
・アクティブトランジションの概念において重要なのは、
 「自律を目指した他律の力」という発想。
 他者の力として重要な役割を担うのが「大学」である。
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投稿者:関根雅泰

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