最近読んだ「研修転移」に関する英語文献を共有します。
(・引用 ○関根の独り言)
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●東大 中原ゼミで紹介されていた英語文献
Salas, E. et al.(2012)
The Science of Training and Development in Organizations: What Matters in Practice.
Organizational Training and Development.
○「研修の科学」に焦点をあてたレビュー論文。
・複数のメタ分析の結果、適切に設計された研修は、効果があると言える。
・研修とは、知識、技術、態度の獲得を促進する計画的で
システマチックな活動である。
・行動と認知に持続的な変化をもたらすことが、研修のゴールである。
・「研修」は、複数の学問領域(認知科学、工学、
組織心理学、教育学等)にまたがっている。
・「研修転移」は近年に発展したテーマ。
もともと「学習転移」は、認知心理学において研究されてきた領域である。
・研修は、一過性のイベントではなく、反復するプロセスを含むシステムである。
だからこそ、研修の前と後に何が起こるのかに着目することが必要になる。
・メタ分析の結果から、マネジャーとリーダーの効果性を研修は高めると言える。
組織は、リーダーシップ開発を支援すべきである。
・研修「前」「中」「後」にすべきこと。
・研修「前」は、研修ニーズ分析をして、学習雰囲気を作るべき。
・研修「中」は、受講生の自己効力感等を高め、
適切な指導原則に従い、技術を上手に使うべき。
・研修「後」は、研修転移を促し、研修を評価すべき。
・上手に設計された研修とするために、次の4つを含むべき:
information 情報、demonstration 実演、practice 練習、feedback 評価。
・仮に否定的な職場環境であったとしても、同僚の支援は、
研修転移に正の効果を示した(Martin 2010)
・研修では、学習者が「どこ」の「だれ」に、助けを求めれば良いのか、
分かるようにすべき(Kraiger 2008)
↑○まさに「人脈マップ」がやっていること。
・何のために行なうのか、研修評価の目的を明確にすべき。
・研修には確かに効果があると言える。そのため、研修は、コストではなく、
組織の人的資源に対する投資とみるべきである。
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Salas, E. et al.(2008)
Does Team Training Improve Team Performance? A Meta-Analysis.
Human Factors.
・メタ分析の結果、Team Training(チームでの研修)は、moderate な
(p=.34)効果がある。(成果変数に対して、12%~19%の説明力を持つ)
・「チーム」とは、共通の目標や目的をもち、各自が特定の役割や機能を果たす、
動的、適応的、相互依存的に活動する二人以上の個人(Salas et al.,1992)
・「研修」とは、仕事に関連する知識、技術、態度を獲得しやすくようにする、
システマチックで、計画的な介入(Goldstein & Ford, 2002)
・H1、H2a~H2d、H3、H4、H5は支持。H7は一部を支持。
H6、H8は支持しなかった。
・チームでの研修は、効果が実証されているので、実施すべきである。
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Arthur Jr. W. et al. (2003)
Effectiveness of Training in Organizations: A Meta-Analysis of Design and Evaluation Features.
Journal of Applied Psychology.
・メタ分析の結果、研修には、中~大の効果量(0.60~0.63)が
あることが明らかになった。
・カークパトリックの4レベル評価モデルを、本研究でも採用し分析する。
・L1の反応は、他の3つと関連がないことが多くの研究で示されている。
・L3の行動は、環境要因に左右される。
・L4の成果は、Utility Analysis Estimate(Cascio, 1991,1998)を使って測る。
・Training Needs Assessment 研修ニーズ分析は「組織」「業務」「対象者」
分析の3ステップを経る。
・3つのスキル領域:認知、対人、心的動的
・メタ分析の結果、
L1反応は、研修直後(0日)
L2学習は、平均 26.3日後。
L3行動は、中間値 133.5日後。
L4成果は、中間値 158.8日後に、取られていた。
・研修ニーズ分析と、研修評価には明確な関係はなかった。
研修ニーズ分析が含まれた文献が、6%と少なかったこともある。
・レクチャーは退屈で効果的でない研修手法と考えられてきたが、
メタ分析の結果では、比較的高い効果量が示された。
・我々のメタ分析の結果、企業研修は全般的に効果があると言える。
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Nijman et al. (2006)
Exploring differential Effects of Supervisor Support on Transfer of Training.
Journal of European Industrial Training.
・Holton(1996)のモデルを元に、上司支援と研修転移の関係を検証。
・「学習結果」が、「転移結果」に影響。
・「上司支援」は、「Transfer Climate 転移雰囲気」を通じて、
転移結果に間接的に影響。
「上司支援」は、「転移意欲」に、負の影響を及ぼしていた。
○例えば、上司が「研修に出たんだから、それなりに結果だせよ」みたいな
威圧的な接し方をしたから、「転移意欲」が下がるのかも。
上司にできることは、直接的な働きかけよりも、職場全体の「学習・転移意欲」
が高まるような雰囲気作りなのかも。
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Alvarez, Salas, & Garofano (2004)
An Integrated Model of Training Evaluation and Effectiveness.
Human Resource Development Review.
・Training Evaluation研修評価と、Training Effectiveness研修効果は、
2つの異なる概念。
・両者を統合したモデルを、IMTEE: integrated model of training evaluation
and effectiveness として提示。
・posttraining attitudes 研修後の態度(例:自己効力感)を含んでいるのが特長。
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Burke & Hutchins (2007)
Training Transfer: An Integrative Literature Review.
Human Resource Development Review.
・「学習者の特徴」「研修設計・運営」「職場環境」の3つに分けて、
先行研究をレビュー。
実証研究の結果、「研修転移」に効果がある変数を提示。
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●同じく中原先生に教えて頂いた「アイデア社」の動画
「ラーニングトランスファー」で紹介されていた文献で、まだ読んでなかったもの:
https://www.youtube.com/watch?v=N7tmu_oN1XE&t=176s
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Dilworth, R.L. Redding, J.(1999)
Bridging Gaps: An update from the ASTD research committee
・HRD担当は、研修設計、開発、運営、事務に、多くの時間を割いており、
ビジネスとのつながりや測定には少しの時間しか割いていない。
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Tharenou,P(2001)
The relationship of training motivation to participation in training and development
Journal of Occupational and Organizational Psychology. 54. p599-621.
・「Motivation to learn 学習意欲」 と
「Motivation through expectation 期待からの意欲」または「Expectancy 見込み」
が、研修参加に影響する。
・研修を通じて、知識、技術、能力が向上する事で、
外的な結果(昇給、昇格、雇用安定)が得られると感じると、研修に参加する。
・研修参加には、上司の支援が影響していた。
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Robert O. Brinkerhoff,Max U. Montesino(1995)
Partnerships for training transfer: Lessons from a corporate study.
Human Resource Development Quarterly vol.6, no.3, pp263-274.
・研修「前」と「後」に、職場のマネジャーから参加者に対して
働きかけを行う「実験群」とそれらを行わない「統制群」を設定。
・その結果、マネジャーから働きかけのあった対象者のほうが、
スキルの現場実践度合いが高かった。
・研修担当は、職場のマネジャーとのパートナーシップを結び、
研修転移を促すべきである。
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Newstrom (1986)
Leveraging Management Development through the Management of Transfer.
Journal of Management Development.
・パレートの原則からすると、研修設計・運営に80%の力を注ぐより、
20%の力で、80%の実践を生み出す「転移管理」に力を注ぐべき。
・84名のHRD実践者(ASTD)たちへの調査から、3×3のマトリックスを開発。
・95の転移戦略を抽出。
・「転移管理プロセス」を提示。
○参考:Newstrom(1992)の本 https://www.learn-well.com/blog/2014/09/transfer_of_training_1.html
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