2019年10月9日(水)10時~17時@立教大で、「EI情動知性×リーダーシップ研究会」を開催しました。
(内容 https://www.learn-well.com/blog/2019/07/post_500.html/ )
全部で11本の英語文献を皆で読み合いました。
当日の様子を差しさわりないと思われる範囲で共有します。
(・文献要約 -意見交換)
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Emotional intelligence:implications for personal, Social, Academic, and Workplace Success(2011)
・イェール大学(P.Salovey)が、EI研究の中心地。
・EIの定義「自己と他者の感情及び情動を認識して区別し、
思考や行動に活かす能力」(Salovey and Mayer 1990)
・知能を測るパフォーマンス評価 MSCEITを開発。
https://www.mhs.com/MHS-Talent?prodname=msceit
-感情の知覚、使用、理解は、他者が評価できない。
感情の管理なら、行動面に出ているので、他者が評価できる。
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Emotional Intelligence and its Relationship to Workplace
Performance Outcomes of Leadership Effectiveness(2005)
・EIが高いほど、リーダーシップの有効性(パフォーマンス、
リーダーシップ行動の360度評価)が高くなる。
・MSCEITで、EI能力を測った。
・EIが高いエグゼクティブは、ビジネス成果を達成する可能性が
高く、部下や直属のマネージャーによって、効果的なリーダーと
見なされることを示唆。
・経営幹部レベルに到達するには、IQを必要とするが、いったん
そこに達すると、IQではなく、EIがパフォーマンスを区別する。
-EI(個人)と、成果What(組織)を相関させるのは難しいのでは。
-EIとソフトスキルとの相関は高い。
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Emotional Intelligence, Leadership Effectiveness, and Team Outcomes.(2003)
・リーダー、チームメンバーのEIが、チームプロセスや効果に
どのように作用するのか、先行研究からモデル化する。
・高いストレスや重圧の中で働くことができるメンバーを、
EIを測ることで採用できる可能性がある。
-別調査でも、EIが高い人ほど、社会的手抜きをやっていない
という結果が出ている。
-学生のリーダーシップ行動では、他者への「配慮」が高い。
その後、「率先垂範」が上がってくる。
-EIの高いチームメンバーは、政治的行動をとっていると見られる。
自分がそう思ってしまった時は、自分のEIの低さを顧みる必要があるかも。
-EIの高さを、正の相関性のみだけで見ない方が良いのでは。
-年齢が上がるにつれて、EIが下がることは?(例:暴走老人)
-対話型鑑賞は、EIを上げる効果があるかも。
(絵の中にある感情を読み取る)
-新規事業でネガティブな感情に向き合わざるを得ないこともある。
-組織レベルでの感情(新規事業に関する妬みややっかみ)もある
「育成事業」「基盤事業」という言い方をしている企業もある。
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Relation of employee and manager emotional intelligence to job satisfaction and performance(2005)
・高いEIの従業員は仕事への満足度が高い。
・高いEIの従業員は仕事のパフォーマンスも高い。
・上司が高いEIを持つ場合、高EIより、低EIの従業員の
仕事の満足度に好影響がある。
-上司のEIの平均値が、部下のEIの平均値よりも低い。
上司になると「自分はまだまだだなー」と思うのか。
-EIは一つにまとめずに、4つの因子でみれなかったのか。
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A 20‐year view of trying to develop emotional, social and cognitive intelligence competencies in graduate management education. Journal of management development.(2008)
・1980年代から、ケースウェスタンリザーブ大学でのMBAプログラム
により、情動知性や認知に関するコンピテンシーが開発された。
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Emotional intelligence in the workplace: A critical review(2004)
・職場におけるEIの有用性を認める多様な主張があるが、職業上の
成功にEIが意味のある予想力があるとサポートする研究結果は、
非常に脆弱である。
-EIは、どの仕事に向くか、向かないかを見るには役立つかも。
-EIが高くても、グローバル人材になれる訳ではない。
-ある職業に向かない人をはじき出すには、EIは有用では。
-どういうタレントを、どの局面で入れ込むかに、EIは役立つかも。
-戦う場面等で、EIが高いことによるデメリットもあるかも。
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Emotional Intelligence and Transformational and Transactional Leadership: A Meta-Analysis(2010)
・62の研究のメタ分析
・EIと変革的リーダーシップとの中程度の関連を発見したが、
それはEI支持者たちが予測するほどには強力でも説得的でもない
-EIが高いリーダーは、相手に合わせて条件付き報酬行動、
交換型リーダーシップをとっているのかも。
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Salovey, P., & Mayer, J. D. (1990). Emotional intelligence. Imagination, cognition and personality, 9(3), 185-211.
・「社会知性の一部であり、自身と他者の感覚と感情をmonitor
(監視する)能力、であり、この能力と思考と行動を促す情報
とを区別する能力(要するに感覚感情に揺るがされることなく
考えて行動する力)」
・情動調節により、得られること:
Positive side:自身、他者の気持ちをコントロールすることで
よりよい状態を実現することができる
Negative side:悪用することができる
(感情をコントロールして人を動かす)
・情動知性では不足している点:学習方法が不明確
どのように自身や他者の感情を認識できるようになるのか?
-今は、EIを学習できる方法が出始めている。
(例:https://6seconds.co.jp/ )
-EIは、アメリカでの研究が中心?
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Examining the relationship between leadership and emotional intelligence in senior level managers. (2002)
・EIの高いリーダーほど、変革型リーダーシップを発揮していることが実証された。
・EIの低い人は、効果的なリーダーになれる見込みが低い。
・もっとも影響力あるEIは「他者の感情理解」である。
-EIにおいては、定義と測定が問題。
-日本の学校教育では、自分の感情よりも、他者の感情に配慮する
ことを強いられているのではないか。
-「自分の感情を尊重する」という教育は日本ではされてないのでは
-感情を表に出すと、うざいやつだと見られる
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Managerial self-awareness in high-performing individuals in organizations. (1997)
・ハイパフォーマーなマネジャー(HP)は平均的なマネージャー(AV)と
比較して自己認識(self-awareness)が著しく高かったことが示された
-EIとは関係ない論文だった(笑)-セルフモニタリングは、メタ認知かも。
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McCleskey, J. (2014). Emotional intelligence and leadership: A review of the progress, controversy, and criticism. International Journal of Organizational Analysis, 22(1), 76-93.
(レジュメ「EIとリーダーシップ」を開く https://www.learn-well.com/blogsekine/191009%A1%A1%A5%EC%A5%B8%A5%E5%A5%E1%A1%D6EI%A4%C8%A5%EA%A1%BC%A5%C0%A1%BC%A5%B7%A5%C3%A5%D7%A1%D7.pdf”)
参考:EIと組織パフォーマンスの関係があるとしたメタ分析
http://www.eitrainingcompany.com/../../attachment/2012/12/EI-and-job-performance-meta-analysis.pdf
-従業員のEIデータを悪用される恐れ。
従業員は、素直に回答しないのでは。
-1日の終わりに、自分の感情(楽しかった)をふり返ると、幸福度が高まる。
-感情を表現できるボキャブラリーが日本語には少ないのでは。
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●ふり返り 「学んだこと・気づいたこと」 (抜粋)
・「心が動かされる時は、どんな時だろう?」
それは言葉で表現しづらいが、意識していきたい。
・研究者として見ると、EIは難しい。
定義と測定の問題が解消した後であれば踏み込める。
・個人として、感情は触れられたくない。ナイーブさがある。
そこを「測定できる」と言われる違和感。
・実務家としては、「現場が回ればよい」というのがある。
EIに現場を回すヒントはあった。
・大人になると、感情を押し殺すことを求められるかもしれないが、
自分の感情に向き合い、それを表現することの大切さ。
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お声掛け下さった中原先生、文献を選んで下さった田中先生、会場をご準備下さった加藤さん、進行役を務めて下さった舘野先生、斉藤先生、そして、ご参加下さった皆さん、ありがとうございました!
間違い探し(笑)
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当日体調不良で欠席された中原先生のブログ
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/10811
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