○社会構成主義に関する本
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『他者と働く』宇田川元一(2019)
・見えない問題、向き合うのが難しい問題、技術で一方的に解決ができない問題である「適応課題」をいかに解くか、それが「対話」
・対話とは、「新しい関係性を構築すること」
・お互いにわかり合えていないことを認めることこそが、対話にとって不可欠。
・ナラティブ(Narrative)とは物語、つまりその語りを生み出す「解釈の枠組み」のこと。
・それぞれの立場におけるナラティブ(一般常識)がある。
・一度ひいた目で周りを見渡して初めて、分かりあえない人々との間に、大きな溝があることに気づく。
・相手にも空いてなりの何か事業があるのかな、見えている景色が違うのかなと、想像してみる。
・相手の埋め込まれている関係性を理解する
・色々な問題や困難に直面するほど強くなる性質のことを、反脆弱性という。
・日常の言葉を交わす会話を通じて、私たちは現実を創り出している。
・言葉を変えることで、現実を変えることができるのではないか。これがナラティブアプローチの哲学的意義。
・相手を問題のある存在ではなく、別のナラティブの中で意味のある存在として認める。
・立場の弱い側は、いくらでも人のせいにして、逃げ道がある。
・人が育つというのは、その人が携わる仕事において、主人公になること。
○これ、いい言葉!
・部下が仕事のナラティブにおいて、主人公になれるよう助けるのが、上司の役割。
・戦わなくて良い状況、つまり「新しい関係性」を作る。
・職場の内外に「相棒」を見つけておくことが大切。
・組織のメタファー「機械」「有機体」「頭脳」に共通するのは、働く一人一人は、組織を構成する部分であり、中心的な存在ではないということ。
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『あなたへの社会構成主義』K.J.ガーゲン(2004)
・経験主義:あらゆる知識の源は、経験であるという哲学の考え方
・脱構築主義者のデリダは、言語とは、差異のシステムであると考えた。
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・認定される疾患の種類が増えるにつれて、精神衛生の専門家の数も増えている。
・言語は、世界をありのままに写し取るものではない。
・社会構成主義者は、自省Reflexivity:自分が持っている前提を疑問視し「明らかだ」とされているものを疑い、現実を見る別の枠組みを受入れ、様々な立場を考慮して物事に取り組む姿勢を、非常に大切だと考える。
・何が科学的真実であるかは、科学者コミュニティーによって決定される。
・現実の構成に対する考察の立場:
Radical Constructivism 急進的心理的構成主義 レヴィ・ストロース
Constuctivism 心理的構成主義 ピアジェ
Social constuctivism 社会-心理的構成主義 ヴィゴツキー
Social constuctionism 社会構成主義 ガーゲン
Sociological constructionism 社会学的構成主義 ジール
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・メタファーに操られると、自分たちが取りうる手立てをたった一つに減らしてしまう。
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・統計は人々を黙らせる装置ともなりうる。
・典型的な実証研究は、価値中立性というオーラをまとい、道徳的、政治的なものとはまったく無縁であるかのように見せかけている。
・社会構成主義では、何よりも「自省」と「解放」を目指している。
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・言説を通して、自分たちの世界を創り出しているとしたら「いかに話すか」「いかに書くか」ということが、とても重要な意味をおびる。
・発達心理学者は、人間を「機械」か「花」かというメタファーで捉えてきた。
・記憶は、共同体の中に「配分される」
・感情とは、個人の心の所有物ではなく、関係のもつ特性。
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・言葉は、それ自体、一つの社会的実践。
・お互いに理解するということは、一緒に滑らかなダンスをするのと同じ。行為を調和させること。
・対立の基盤が、対話を通して現れてくるならば、対話こそが、対立に満ちた現実を扱う最も有効な手段となる。
・自らのよって立つ位置を反省するということは、異なる声を受け入れること。
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・社会構成主義のセラピストは、クライアントが自分の問題そのものについて語るよりも、その問題の解決について語ることのほうが、有効な場合が多いと主張。
・伝統的な学校教育は「栄養士モデル」知は「よい食べ物」であり、生徒は栄養を与えられる者。生徒はからの容器と考える。フレイレによる主張を、社会構成主義は支持する。
・栄養士モデルでは、教師は「対話(ダイアローグ)」よりも「独語(モノローグ)」というスタイルを好む。
・伝統的な学問に多くみられるように「神」の視点に立つことをやめ、研究の中で、著者という血の通った人間の存在を明確にしようとする。
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・ロマンス小説を、女性は意外な読み方をしていた。別の視点から、ドラマを見ることができる。
・私たちは、みなプロデューサーであると同時い犠牲者でもある。
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・ある生活形式を、私たちに押し付けることはできない。
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・「社会的な構成の産物である」という言葉で対話を終わらせず、新たな対話の可能性を開くものとして用いることで、社会構成主義の主張が意義を持つ。
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『社会構成主義の理論と実践』K.J.ガーゲン(2004)
・我々は何を信頼できるというのか。デカルトは、私が疑っていること、このことだけは疑いようがないのではないか、と。Cogito ergo sum われ思う、ゆえに我あり。
・しかし、デカルトはいかなる根拠で、懐疑のプロセスは、外界とは独立して外界を写す、個人の心の活動と言えるのだろうか。Communicamus ergo sum 言説あり、ゆえに我あり、と言い換えるべき。
・基礎づけ主義に変わるポストモダンに共通するのは、言語が関心の中心であること。我々がいかなる方法を用いて世界についての知識をもとうとも、それは本質的に言語的構成の産物なのである。
・「知識は個人の頭の中にある」という観念こそが、各種制度の存立根拠となっている。
・伝統的な心理学は、行動主義(経験主義)に回帰することもできないだろうし、認知主義(合理主義)の方向でのさらなる発展も難しい。
・意味の四角形
・20世紀の大部分において、心理学の学会を支配したのは、行動主義のクラスターであった。その後、認知主義が主流になった。
・科学的知識の哲学は、ポスト経験主義の段階に入っている。科学を根本的に合理的なものとみなそうとする試みは、おおむね消滅している。
・刺激→反応とうい因果関係の連鎖という考え方も崩壊した。
・経験主義も合理主義も「頭の中の知識」という概念を自明視している。それに対して、社会構成主義は、知識が共同的関係の産物であることを主張する。
・認知主義の隆盛は、コンピューターとの連携によるものである。コンピューターは、認知理論のメタファーであり、技術的な検証を支えてもいる。
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・心理学以外の学問領域では、既にいくつかの知的変革が起こっている。これらの知的変革は「頭の中の知識」の代案「知識は社会関係の中にある」を共通のテーマにしている。
・ポストモダンでは、ワード(言葉)とワールド(現実世界)の正確な結びつきにこだわったりしない。
・中立的とはいえない科学的記述は、女性を再生産工場と見る男性側のメタファーの産物。
・なぜ、言説が、内的存在(思考、意図、構造など)の外的表現であると仮定しなければならないのか。
・西洋的認識論の歴史はすべて「鏡としての心」という不幸なメタファーから生じている。
・「言語は事実を運ぶ」という伝統的な言語観に対する批判。
・科学理論の価値は、何よりも予測力にある。予測力に優れた理論が、良い理論。
・社会構成主義は、自らの研究者としてのコミットメントを私的感情と切り離したり、事実と価値を区別しようとするのではなく、研究者としての全人的表現を求める。
○まさに、これを体現して書いていたのが「あなたへの~」だな~。
・科学の価値中立性など、空想に過ぎない。
・セラピスト、カウンセラー、組織コンサルタント、教育者らは、研究者よりも、文化に対してはるかに多くの影響力を持っている。学者の難解な著作よりも、日常の人間関係に深く直接的に入り込む。彼らは文化を変容させる大きな潜在力を持っているのだ。
○これ勇気づけられる分、気を付けないと。
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・社会構成主義のルーツは、イデオロギー批判、文芸論的、修辞学論的批判、科学の社会的批判にさかのぼることができる。
・ピアジェ(1954)の発生的認識論は構成主義とよばれ、その主な理論的主張は、個人(の頭の中の知識)が現実を構成するという点にある。
・社会-心理的構成主義は、個人より社会を重視する。
・西洋医学は優れているように見えるだけ。科学の使徒は、より強力な征服者であり、彼らが他の文化の担い手を著しく抑圧したからである。
・社会構成主義は「真実」を主張しないがゆえに、他の選択肢を排除したりしない。
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・ダーウィンによれば、様々な生物種は、ホッブズの言う「万人の万人に対する闘争
」の状態にある。だから、人間という種が生き残るためには、他の動物よりも適応的でなくてはならない。
・「道徳的行為」を保証する手段は、社会化と教育をおいてほかにない。すなわち「道徳的行為」を、個人にすりこむことだ。
・社会構成主義は、人々の異質性を所与とした上で「人々が互いに満足できる状況をもたらす関係性はいかなるものか」を問う。
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・心理学は、総じて認知革命を課題評価しており「悪しき革命からおりる」ことができなかった。
・経験主義は、知識の「生成」と「応用」を区別してきた。社会構成主義の認識論から言うと、この「知る人」「使う人」という区別は意味をなさない。
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・社会構成主義は、社会生活の自省的分析を要請する。
・精神疾患の語彙は、武器に似ている。その存在自体が、攻撃対象を作り出す。その帰結として「理想的でない」個人は「治療プログラム」に送り込まれる。
・宗教や芸術ではなく、科学の一員であることを主張することによって、心理学の専門的言説は、物理学や化学と同じレトリカルな重みを得ることができる。
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・客観性の概念は、巨大なレトリックの力を持っている。客観的であることは、適応と密接に結びついている。客観性は、レトリカルな営みの一つに過ぎない。
・機械的自己の概念は、著者の主張に権威を与えるレトリックを生み出す前提として機能していることがわかる。
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・社会構成主義というメタ理論と緊密な関係にある理論は「関係性理論」である。関係性理論では、自己概念としての「自己についての語り(Narrative)」に注目する。
・物語は、人生の現実を作り上げる手段となる。
・物語の構造
1)価値ある終点を明確にする
2)終点にとっての関連事象を選択する
3)事象を並べる
4)同一性を安定させる
5)因果の連鎖を作る
6)区切りを示す
・語りの形式
・社会構成主義では、アイデンティティを「個人の心の達成」ではなく「関係性による達成」として捉える。
・アイデンティティは、他者に依存した不安定な関係に乗っかっているようなもの。
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・個人主義の影響下で育まれた「自分第一」という態度。「自分が勝てばいいのだ」
・社会的交換理論は、継時的な関係性のパターンを問題としているが、その根底には「利得最大化」という個人的方略の存在が前提とされている。
・社会構成主義の目的は、既存の行為パターンに、新たな選択肢を生成することにある。すなわち、自然を明らかにするから、自然を豊かにすることへの移行がある。
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・モダニズムの観点では、セラピストは、疾患を見つけ、それを除去しようと試みる。これが、診断と治療の過程である。
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・M.バフチン(1981)は、文化における言語のパターンに2つの主な傾向を見出している:求心化と遠心化
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●参考:
「ダイアローグ」https://www.learn-well.com/blog/2009/02/post_218.html
「デジタル教材の教育学」https://www.learn-well.com/blog/2011/05/post_342.html
「Dialogic Organizational Development」https://www.learn-well.com/blog/2015/12/dialogic_organization_developm.html
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